数分待って、僕を含めた三名がそろった時点で「そろそろ、行きましょうかぁ」とOLの甲高い声と共に面接試験ブースまで移動。集団面接だろうなという僕の推測は確信に変わった。そのブースに入ると、三十代後半のメガネ面接官が長机の向こう側に座っていた。それと対峙するような形で僕ら三名も席についた。

僕は一番左側の席に座り、緊張しながら笑顔を作って面接官を見つめた。「面接では笑顔が命」と、アルバイト情報誌の面接対策記事に書かれていたので、僕は常に無理な笑顔をつくっていた。

しょうがない、金のためだ。普段、無理な笑顔など作ることなどしないから顔の下半分だけ強制的に笑顔を強いる。それは不自然極まりなく、完全に覚せい剤常習者が犯罪を犯す直前のような笑顔のようであったと思う。

「それでは、自己紹介を三分程度でして頂けますか? 右の方からどうぞ」

一番右に座っていたショートカットの笑顔が眩しい女子高生が、白い歯を見せつけるように爽快な笑顔で答える。また、その白い歯が嘘臭い。

「はい! 私はチータです! と言いますのも、私は常に動いていたい人間で、何をするにも機敏にスピーディーに動けます。採用して頂ければ、このスピーディーさをアルバイトに活かして頑張りたいと思います。よろしくお願いします!!」

はいはい、出ました。必殺動物たとえ。トリッキーな回答して目立とうとするやつね。チータって、お前は水前寺清子か! ほんま嫌いやわ。お前、自信たっぷりにヤッタッタ顔してるけど、完全に今のチータのくだり、スベってるからな! と隣の隣の席で心の中でツッコむ僕。

チータよ。まず面接官の気持ちを考えてやれということだ。レストランの新規オープンのため、上質な有期雇用者を採用せよ、という使命を与えられた面接官。上司から無理難題を押し付けられ、栄養ドリンクと家族の写真片手にその重責を果たす面接官。

労務の提供の対価として給与をゲットし、税金を納め、社会保険料を納めるという国民の義務を果たし、家族を養っていく立派な社会人、それが面接官だ。

そんな彼が会社の採用活動という業務のため、ひとたび、求職者に自己紹介を請求すれば、「私はチータです」という、狂気的で猟奇的な眉唾物の回答を浴びせられる。親のスネをかじり倒して、セックス乱発している我が子くらいの年齢の女子に、突然「私はチータです」という言葉を浴びせられる面接官の気持ちがわかるか? それを考えよと言っているのだ。

僕が面接官だったら完全に気が狂う。狂気の沙汰である。

※本記事は、2019年11月刊行の書籍『尼崎ストロベリー』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。