太股にどしんどしんと四股を踏む
家内をあばれわれに迫り来
なまはげの荒ぶる所作に泣きやまぬ
児を抱きながら親は耐えをり
なまはげの蓑より抜け落つ藁くずも
ありがたかりき掃かず留め置く
※本記事は、2019年9月刊行の書籍『歌集 秋津島逍遥』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 秋津島逍遥【第34回】
“忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す”
――日本の面白さに旅装を解く暇もない
最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。
尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。
太股にどしんどしんと四股を踏む
家内をあばれわれに迫り来
なまはげの荒ぶる所作に泣きやまぬ
児を抱きながら親は耐えをり
なまはげの蓑より抜け落つ藁くずも
ありがたかりき掃かず留め置く
男鹿半島には「なまはげ」という新春の予祝行事が伝わる。これは鬼の仮面を被かぶり、藁で作った蓑(みの)と藁靴(わらぐつ)を身に着けた「なまはげ」が各家庭を回るというもの。他界から異形のものが訪れ福をもたらし、村(むら)の長幼の間の秩序を守り、人々の怠け心を諫(いさ)める役目を担う。男鹿真山(しんざん)から降りてくると信じられていて、抜け落ちた藁くずは縁起のよいものとされる。男鹿市にある男鹿真山伝承館でも公開されている。