第九章 十年ぶりの恋

「働いてないやつなんて、世間じゃ認められないわよ!」

そう言って姑に罵られた日の夜、アルバイトを辞めることをなぜ彼女に話したのかと、私は旦那を罵った。半年ほど働いて季節は夏になっていた。

夜になっても蒸し暑く、キンキンに冷えた缶ビールがよく売れた。スーパーで買えば一缶百八十円ほどの缶ビールが、ここでは五百円という悪どい価格だ。

風俗嬢として迎える初めての夏。私の運命を変える出会いがあった。

汗をかいた客達の相手にうんざりしつつも、すっかり仕事に熟(こな)れた私は充実感すら覚え始めていた。そんな折、汗ひとつかいていない爽やかな青年が現れた。ショウ君だ。

彼は私を再び女にしてくれた。そして忘れていた『恋』を思い出させてくれた。私より一つ上の二十七歳だという彼は妙に落ち着いた雰囲気だった。

紳士的でスマート、小柄で決して顔立ちが良いわけではないが、清潔感があってスーツ姿がとても素敵だった。何よりも会話にセンスと知性を感じられた。

そして、独特の溜め息を吐くような話し方。第一印象からすごく好印象だった。最初から会話は弾んだ。

私はいつも通り客が喜ぶ風俗嬢を演じていた。セックスが大好きだが今は相手がおらず欲求不満なのだと言うと彼は目をキラキラさせた。