第十一章 インフルエンザ

「セックスしたいって思ってるよ」

旦那のそんな言葉を、私は鼻で笑った。ではなぜ今まで自分から意思表示をしなかったのか。私が歩み寄った時にだけそれに応じるようでは彼の真意を汲み取れる筈もない。言葉と行動が伴わない人間ほど信用できないものはなかった。

「嘘つき」

私の言葉で今までにないほどに険悪な時間が流れた。

旦那は苛立ちで、なかなか寝付けないようだった。私も旦那と言い争いになった時はいつもそうだった。解決するまでは、眠れない。しかし今回は違った。私はショウ君を想いながら穏やかな眠りについた。

身勝手な旦那の言葉に怒りすら感じないのは、もう旦那と真剣に向き合っていないからだった。好きや嫌いではない。旦那のことなんて、もう私はどうでもよくなっていた。

目が覚めると時刻は午前十時を過ぎていた。一度朝早くに目が覚めたが旦那がまだ身支度をしている物音がして、私は起き上がるのをやめた。顔を合わせたくなかった。まず携帯を見ると、ショウ君から待望の連絡が来ていた。

〈美雪ちゃん、明日楽しみだね〉

私はもう家で一人、奇声をあげて大はしゃぎをした。溢れる感情を抑えることができない。泣きながら笑った。私の心は激しく乱れていた。

今日は休みだ。のんびりと明日のデートの準備をしよう。ショウ君とは夕方に電話する約束もして、気分を高めるために久しぶりに自慰もした。

明日のデートでは、とにかく話をしてショウ君の気持ちを確かめたい。流されるままホテルに行くようなことは避けたい。そんな強固な意志とは裏腹に、私のヴァギナは疼いて仕方がなかった。

夜になれば旦那が帰ってくる。誰にも邪魔されることなくゆっくりと電話するために私は夕方から近所のスーパーまで車を走らせた。広めの駐車場に車を停め、昂る気持ちを落ち着かせる。