手術・手術後

一 手術・入院

手術は始まろうとしている。私の心臓は張り裂けそうだ。家族や親戚がいるので、冷静を装っていた。

「戸隠さん。それでは手術室に行きますよ」

昨日入院し、術前の検査をし、体には管が刺さっている。手術の説明がたくさんありすぎて頭にあまり入っていない。この管も何のためか忘れてしまった。もう医師や看護師に全てお任せだ。ベッドに寝ていたがベッドごと移動するらしい。みんな口々に、「頑張ってね」と言っている。引きつった笑顔で手を振ったり、お辞儀をしたりして病室を後にした。

「ここからは歩いてもらいます」

ベッドから起き上がると、テレビで見たことがある手術室の前だった。がん専門の病院で、施設面でもかなり充実しているので、「これが手術室というものか」と圧倒された。

「この手術室なら大丈夫だ」

何の根拠もないことだが、何かに頼りたい気持ちがそんなことを思いつかせた。少し離れた窓のところに家族が見えた。みんな手を振っている。管を気にしながら私も手を振った。手術室に入ると、「麻酔をするのでベッドに座ってください」と言われた。

腕にすると思っていたら、背中に針を刺そうとしていた。最初上手く刺さらないようだったが、ああ刺さったなぁと思ってからの記憶がない。