【前回の記事を読む】セカンドオピニオンを受けた胃がん患者の「人生を大きく変える決断」

手術・手術後

一 手術・入院

これだけ患者がいれば、病院の医師や看護師は大変だろう。そういえば、今が何時なのかも分からなかった。もしかしたら、夜中かもしれない。この部屋には家族は入れない。今は耐えるしかない。私はそう思った。

悪夢の集中治療室から自分で予約した個室の病室に移ると少し落ち着いてきた。三年前の肩の手術で快適な入院生活の仕方が分かってきていた。肩の手術は地元の総合病院でした。その時個室が良いとつくづく思った。入院はどうしても精神的に弱ってしまう。私は周りの人のことが気になってしまうので、気の休まる時がなく、相部屋ではより精神的に参ってしまった。途中から個室に変えたら落ち着いた入院生活を送ることができた。

手術、入院というと、お金のことも心配になる。しかし、日本の医療保障は、高額療養費制度等があり、実に手厚くできている。私は、民間の保険会社の医療保険にも入っていたので、肩の手術や入院で経済的に困ることはなかった。個室の料金も驚く金額ではなかった。手術、入院でお金のことをそんなに心配しないで済むのは、精神的にもとてもありがたいことであった。

入院で気になることがもう一つある。仕事のことだ。長期にわたって職場を休むことになる。自分が休むということは、他の人に皺寄せがいくことになり、申し訳ない気持ちになる。子どもたちにも済まない気持ちで一杯であった。入院、手術のことを校長に伝えると前もそうであったが、今は病気を治すことを最優先に考えればいいと言ってくれた。授業や担当の仕事は他の者が責任をもって行うから、一ヶ月間は仕事のことは忘れていいとも言ってくれた。私はその言葉に感謝しつつ、一ヶ月間の仕事の引き継ぎをしてきた。だから、仕事の心配はもうしないと決めていた。

心配ごとが減り、快適な入院生活を送れそうだが、現実はやはり厳しかった。胃が残ったとはいえ三分の二なくなったので、食べることが最初はできなかった。点滴で栄養を取っていたがボーとしている感じで二、三日を過ごした。食べること以上に苦痛だったのが、尿の処理である。性器の先に管がついていた。体を動かせないのでトイレに行けないのである。時々管を取り替えに来てくれるが、少し痛いのと、情けないのとで、気分が落ち込んでしまった。一人でトイレに行くという当たり前のことができなくなると本当に辛いと思った。

そんな私を救ったのが、窓の外に見える伊豆の雄大な景色であった。この雄大な景色を見ていると、小さなことで悩んでいないで、前を向いて頑張らなければという気持ちになった。海も見えるせいか、山々の緑と海の青さのコントラストが素晴らしい。がんを宣告された日に車を運転しながら見たあの神々しい景色に似ていたのである。

もう一つの楽しみが、自由な時間がたくさんあるということだった。

「入院生活は時間を持て余して大変だよ」

と心配してくれた人がいたが、私には特技があった。空想をしたり、取り留めのないことを考えることだ。中学の時は宇宙のことを考えていた。高校では、人生について考えていた。そういえば、思い出したことがあった。実家がお寺のある友人に、