劇症型地球温暖化の未来シナリオ

この劇症型地球温暖化が進んでいったら、世界がどうなるか、軍事専門家の見方を先に見てみましょう。

『地球温暖化戦争』(新潮社、2009年11月刊)の著者グウィン・ダイヤ―は、この本の中で、戦略国際研究センター(CSIS)と新アメリカ安全保障センター(CNAS)が2007年11月に共同発表した地球温暖化の予測を記しています。このCSIS/CNAS報告書はIPCCの第四次評価報告書(2007年版)を基に作成され、3つの想定シナリオが載っています。

第一のシナリオには、「正のフィードバック」は計算にいっさい盛り込まれていませんので、IPCCの「2度目標」が想定するものに近いのではないかと思います。CSIS/CNAS報告書の執筆者たちは、この第一のシナリオは現実味に乏しいと考えているようですので、ここでは省略します。

第二のシナリオの執筆で中心的役割をはたしたのは、レオン・フュース(ゴア副大統の国家安全保障問題担当補佐官)で、国家安全保障会議(NSC)の閣僚級委員会メンバー(1993~2000年)でした。

レオン・フュースは、IPCC第四次評価報告書(2007年版)のシナリオを基本としつつ、第二のシナリオでは、IPCCモデルから除外された「正のフィードバック」がいまや急速に進行し、温暖化の促進要因として働いており、気候モデルの各構成要素も、従来予想より強めに反応していて地球表面の平均気温は1990年比で2.6度上昇すると仮定しています。

もっとも、それは陸地の上では4度の上昇、極地ではそれよりはるかに高温になっています。ということは、[図表1]でいえば、4度=550ppmに相当し、2060年ごろになるでしょう。

写真を拡大 [図表1] 気温上昇と二酸化炭素濃度の目標値の関係(マーク・ライナス著の表を著者が簡略化)