かつて流行った地方消滅論や、やる気のある地方だけが生き残るなどという地域間の相互作用を考慮に入れない議論などもってのほかです。

また、「地方」の維持・存続が、経済、産業、文化的に東京と同じ価値観で活性化するような方策では意味がありません。東京のグローバルなアドバンテージには全く寄与しないのです。

都市とは違う価値観にもとづいた「地方」の存続のためには、雇用や人口動態とは別の評価軸にもとづく在り方を追求する必要があります。

私はその評価軸には、シンガポール・ドルのテーマにはおそらくなりえない「歴史」、「自然環境」、「今日の人の営み」の3つのテーマがふさわしいと考えています。

ここでいう「歴史」とは名所旧跡を整備するというのではなく、今につながる物語を知らせるということです。

はく製のような保存のためだけの歴史的建築物が仕方なく資料館などとして使われているよりも、多少の改変はあっても収益施設として活用されている施設の方が、場所の歴史を伝える力を持っています。

「自然環境」については、資産として価値を管理してゆく必要があります。醜悪な安全対策や標識、手すりなどの設置が損なった価値を算出してみてはどうでしょうか。

そして「今日の人の営み」こそ、最大の財産です。

日本における各地方の地域住民の気風や暮らしぶりは、まだまだ驚くほどの多様性を秘めています。

「地方」の存続は「東京」の存続にもつながり、日本の国家戦略にもつながる課題と捉え、東京からも積極的に支援してゆくべきではないでしょうか。