都市と地方の豊かさの方程式

日本の都道府県を大都市都府県(政令指定都市を有する都府県)、都市近郊県(大都市都府県に隣接し強い一体感のある県)、地方県の3種類に分類し、人口増加率と今日の可処分所得額の相関を見てみましょう。

すると、大都市都府県では人口増加率に伴い、緩やかに所得も高くなり、都市近郊県では人口増加率に伴い急激に所得が高くなる一方で、地方県は、人口増加率が高いほど所得が低いということがわかります。(図1)

地方の豊かさ上位県が、この間の日本の人口増加に貢献していないはずはないでしょう。むしろこれらの県は、余剰人口を東京に送り出すことで生活水準を維持、向上してきたと考えられるのではないでしょうか。

ここからわかることは、日本の都市と地方とでは、理想とする人口の在り方、豊かさ実現の方程式は異なっていた、ということです。

それは、江戸時代から昭和にかけて、全ての人に納得のいくものであったかどうかは別として、都市と地方との間には役割分担があり、うまくいっていたということでしょう。

図1:人口増加率と可処分所得額の関係

さて今日、「地方で子育てしたい」という人はいますが、「都会で子育てしたい」とわざわざ言う人は少ないように思います。もっとも、都内だけで見れば、例えば、進学に有利な千代田区の中学校に通わせたいという家庭などを目にすることもありますが。

全般的に見れば、都会で子育てをする人は、都市特有の社会サービス水準とのバーターで都会を選ぶか、縁や仕事の関係でそれしか選択肢の無い人たちと言ってよさそうです。

繰り返しになりますが、今日の東京は江戸時代から驚くほど変わっていません。

それは、「地方」から供給される「モノ」と「ヒト」を吸収し消費する都市の姿です。しかし一方で「地方」は変わってしまったようです。