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Always think of the earth asthe denominator

20年前、夫に同行して3泊の予定でニューオリンズの学会へ行った時のことです。

世界各国の方々が集まる会場に、心も躍りました。観光以外の目的で海外へ行くことが初めてだった私には、とても新鮮だったからです。

大きなコンベンションセンターには、最新の医療機械やプレゼンテーションのブースが並び、カフェもあって、合間にはクッキーやキャンディを自由に頂くことができました。

夫がここに参加した目的は、世界から集まる最新機器の技術を見ることと、情報を仕入れること。真剣な夫を横目に、カフェでくつろぐ私でした。

学会日程の2日目には、予約したディナーに出かけました。ディナー会場は、ニューオリンズの海岸に停泊している大きなフェリーでした。船に乗り込むと、指定された16名の円卓で世界各国のドクターたちが楽しそうに話をしています。

すると、お隣の方が話しかけてきました。

「Where are you from?」 だと思い、「Japan」と答えました。

「Oh! Japan!! Japan has beautiful mountain.I love Mt.Fuji! Have you ever climbed Fuji mountain?」

富士山に登ったことがない私でしたが、

「Yes!」

と言って、その後は質問されても笑顔で頷くだけと決めていました。その結果、私とお隣の会話は、たった60秒ほどで終了したのでした。

なかなかお会いすることができない世界の方々とテーブルを共有し、音楽を楽しんでいる今、私はテーブルの上のクチナシの花となるしかありませんでした。

「なんて、もったいない!」

と、自分の英会話の乏しさに不甲斐ふがいなさを感じました。世界を知り、見識を広げるチャンスなのに、それが無碍むげに目の前からスルリと消えていくような実感に包まれるのでした。