英国国立ウェールズ大学経営大学院にて医療経営学修士号を取得した臨床医が、現代の医療経営の諸問題を追及します。

ブランディング戦略

ブランドとは?

ブランドという言葉を聞くと、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルなどの高級ブランドを思い浮かべる人が多く、医療にはそんなの関係ないと思われる方が多いと思います。ここでは医療経営とブランディング化戦略について述べたいと思います。

そもそもブランドとは「競合相手やその製品・サービスとの違いを明確にするために用いられる名前・言葉、デザイン、シンボル、またはそれらを組み合わせたもので差別化の核」と定義されます[15]。

[図表1]にブランド構築のメリットを列挙しています。フィリップ・コトラーは、もし提供しているものがブランドでなければ、それはコモディティにすぎないと言っています。そして、コモディティの世界では、価格こそがすべてであり、低コストの生産者が唯一の勝者になります。

[図表1]

ほとんどの商品のコモディティ化が進んでいる今日世界の消費者は、商品そのものというよりは、商品が持つブランド性やストーリー性を買っています。医療経営においても単に寿命の延長や苦痛の軽減のみを目的に医療機関を選択しているわけではなく、病院や医師のブランド性、ストーリー性を求める時代になっています。

働く人側にとっても、日本人はどの組織や団体に属しているかということを気にするわけですが、自身の価値をその属している組織やコミュニティーから裏づけをもらおうとします。医療者を雇用する際にも、非雇用者にとって医療機関を選択することは自身の価値観を表出することになるわけです。

ブランドにはヒト、モノ、カネなどの経営資源と同じ、内部資源と考えるブランドエクイティの考え方が普及しています。それではなぜ医療機関でブランディング戦略を考える必要があるのでしょうか。