英国国立ウェールズ大学経営大学院にて医療経営学修士号を取得した臨床医が、現代の医療経営の諸問題を追及します。

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それでは医療における真の価値とは何でしょうか?

「医療の質」を測る視点として、1980年にドナべディアン博士(1919-2000)が示した「ストラクチャー(構造)」、「プロセス(過程)」、「アウトカム(成果)」の3分類がよく用いられます[16]。

ストラクチャーは医療を提供するための体制、プロセスは医療者により実施された診療やケアの内容の評価、アウトカムは診療・ケアにより実際に得られた効果を評価します。

従来の医療の質評価においてはストラクチャーの評価が中心であり、例えば病院機能評価でも主にストラクチャーに関して評価が行われていましたが、医療の真のアウトカムを評価しているわけではありません。しかし,近年、プロセスやアウトカムを数値化して評価するための臨床指標(クリニカルインディケーター)の活用が進んでいます。

臨床的アウトカムとして院内死亡率、再入院率などの他、合併症発生率といった避けるべきアウトカム、さらには患者満足度やQOL等の患者報告アウトカム(patient reported outcomePRO)や、在院日数・コスト等の経済的アウトカムなど、多種多様な指標が用いられています。

アウトカムでなくプロセスを評価するなら、ナチスのヒットラーも国の代表として選ばれるプロセスそのものは正しかったわけです。しかしそのアウトカムはユダヤ人の大量虐殺や第二次世界大戦であり明らかに誤っていたわけですので、医療もストラクチャーやプロセスの評価のみでは不十分です。