どんなに努力しても人間が永遠に生き続けられるわけでは​ない

臨床現場にいる医師は日々目の前にやってくる患者の診療に専念しています。自身の成長を実感できている期間は、自身のためと思って踏ん張れる時期があっても、自身の成長がプラトー(停滞状態)になると日々の業務はルーチン化します。

しかし臨床現場に終わりはなく、いつまで頑張っても世の中から病気は容易には撲滅できませんし、救急外来にも次々と患者がやってきます。さらにどんなに努力しても、学会で最新の医学を勉強して実行したとしても、人間が永遠に生き続けられるわけではありません。

副作用の強い肝炎の治療を一生懸命行って治癒したにもかかわらず突然交通事故で死亡したり、高血圧の治療をいろいろな降圧剤で工夫して治療していたのに進行した膵癌で発見後3か月目に死亡するなど、医療の限界や不確実性に直面します。

私は京都にある堀場製作所の元会長の故堀場雅夫氏を尊敬しており、以前直筆サイン入りの玉書を賜った経験もあります。京都府立医科大学関連病院協議会で堀場雅夫氏の講演を拝聴した際に、堀場雅夫氏は社員に好きなことをやらせておけば何時間でも続けて働き、どんどん成果が上がると話しておられました。「おもしろおかしく」を社訓とした経緯なども拝聴し、当時大変感銘を受けた記憶があります。

結論的には究極の医師マネジメントは「おもしろおかしく医師の好きなようにやらせる」ということですが、医療という業界のさまざまな制約や、管理者のマネジメント能力の不足から困難な道のりと思われがちです。

まず、医師のマネジメントが困難な理由を考えるために、医師が日々直面している3つのコンフリクト(対立)を挙げました[図1]。

[図1]医師が直面する3つのコンフリクト

1.ホッブスの対立(Hobbesian conflict):組織の中の医師

組織に属していることで個人の自由の制限を受ける一方、組織の一員として存在することで享受できるメリットとの対立があり、これをホッブスの対立と言います。

組織人として、当然守るべきルールがあり、時には自身の欲求を抑制しなければならないことがあります。一方、街中である日突然医院を開業しても、全く患者が来ないというリスクがありますが、大学病院の外来であれば京都府立医大附属病院や愛知医科大学病院という看板で患者が確実に来るというメリットを享受しています。

外来に来院する患者は医師個人の医療レベルや人間性を熟知しているわけではありませんので、病院の看板に群がっているだけなのですが、何十年もかけて先人が築き上げてきた土台の上に成り立っているのが組織であり、制約のある一方でメリットも享受しています。