彼女は軽音の子で、わりと目立つ女子4人組グループのひとり。 部室内スタジオの時間割りで、他の1年バンドにゴリ押しで時間の交替を迫ったり、借りた機材をなかなか返さなかったり、いつも強気でわがままな印象。 先輩や顧問の先生には礼儀正しくて従順だから、行動の基準が損得重視のメリットちゃんだ。

世渡り上手いな...と感心こそすれ、俺はあんまり好きではない。4人のうち、誰かが欠けたときの、他の3人の不在メンバーに対する物言いもけっこう辛辣で、引く。

こないだ三緒に話した、人生のスパイスだな。さしずめ彼女らはスパイス・ガールズか。 そんなグループいたな。大ヒット曲『ワナビー』が頭をよぎる。

話すうちに、黒猫の模様のサブバッグをほめたところ、飼っている黒猫の話になり、猫エピソードを色々と語ってくれた。 初めて見つけた雨の日のこと、甘えて勉強の邪魔をすること、丸一日いなくなった日の切ない気持ち。 嬉しそうに話す様子は、彼女、平野真侑がどんなにペットのニャームを大事に思っているかが伝わってきて、純粋にかわいいと思った。

少しイメージ変わったな。 普段もこうならいいのに。そっか、俺はドラムの「先生」だから、メリットあり認定? ...そんな考え方は淋しいな。余計なフィルターはいらない。感じたままで、いいじゃんか。

学校近くのバス停留所を越えたところで、スパイス・ガールズのあと二人を発見。

「キャーッ、じゃまたね!」

急にテンションがぐわっと上昇して、二人のもとに駆けていった。 同じニンゲンか??

朝から元気だな、オイ。 3人で盛り上がって幅利かせて歩く様は、いつものスパイス・ガールズだ。相乗効果だな。 くっくっ、やっぱ人って面白い。