-------名前-------

学校からの帰り道、部活のあとの気だるさに任せていくつもの、家々を通りすぎるその刹那、中に住む人に想いを馳せる。

どんな家族? どんな部屋? どんな会話? 
もし自分がそこに生まれていたらどうだったろうか。

裕福かどうかはあまり関係ない。そこでもまれて育って、自分がどんな風に形成されていくのかを想像するのが好きだった。

椎名結城、しいなゆうき。

「両方名字みたい、てか、両方名前みたい。入れ替えてもオッケー的な?」
「そうそう」

調子を合わせる。
たまにからかわれたが、俺的にはどっちでもいい。
パッと見、性別がわかんないところも結構気に入っている。

結城は母の旧姓。
結婚のとき、事実婚にするか散々モメた結果、折れた母のまさかのゴリ押しで決まった名前と聞いている。

「結婚が決まるまで、自分が旧姓にこだわるなんてわかんなかったわ」とは、母の弁。
「だって、名前が半分無くなるんやで? アイデンティティーも半減や」

生粋の東北人のくせに、時々身内限定でふざけた関西弁を喋る母は言った。いわく、その言語でないと表現できないエモーションがあると。

なんで? 何故に関西弁?