僕はあの頃の高揚を記憶から掘り起こしながら、マコトに嬉嬉として伝えた。

「マジ? きよぴー、優しっ!」

「嬉しくて嬉しくてな。赤色と青色のプレゼント包装を急いでビリビリ開けてさ。箱を開けたら、俺が欲しかったミニ四駆が入ってんねん!」

「スーパーエンペラー! めっちゃええやん!」

「せやろ? でもな? ちょっと、ちゃうねん」と僕はトークを変調させた。「え?」とマコトが聞くので僕は「ちょっと、ちゃうねん」と繰り返した。

「どういうこと?」

「ぱっと見ぃはスーパーエンペラーやねんで。でも、なんかちゃうねん。ボディの色とか、フォルムの感じになんか違和感を感じるねん。でさ、よーく見たら、スーパーエンペラー『B』って書いてんねん」

「『B』?」

「おん! アレっ? ってなるやん?」

「スーパーエンペラーに、アルファベットなんかついてないもんな?」

「そうそう。完全にスーパーエンペラー『B』やねん!」

マコトは笑って、「TAMIYA製のミニ四駆にそんな車種ないよね?」と言った。僕も笑って「無いよぉ。聞いた事ないわ」と返報した。

「おかしいなぁ、と思って箱に書いてあったメーカー名も確認したんよ。ほんならな?」

「ほぉ」

「TAMAYA、って書いてるねん」

「TAMIYAやなくて?」

「おん! タマヤ」

「TAMAYA製スーパーエンペラー『B』!!」と言ったマコトは腹部をおさえて爆笑した。

「たまやー!!!」と商店街の天井アーケードに向かって叫んだマコトに僕は「いや、打ち上げ花火ちゃうから!」とツッコミをいれた。マコトは再び腹を抱えて笑った。

「もうさ、完全にニセモンやねん! でもな、目の前に、ドヤ顔のオカンがいてるわけ?」

「あー!? きよぴー、ニセモンやと思ってないんや? それは、もはや惨劇やなぁ」

「せやねん! そこがまたタチ悪いやろ? 推測やけど、多分値段安かったんやと思うねん」

「なんせ、TAMAYA製やからな」

「オカン、『駿ちゃんが好きなヤツ、セールしてるぅ!』て思って買ってくれたんやろうなぁ。ただただニセモン掴ませられてもうただけやねんけど」

「きよぴー、可哀想やなぁ」とマコトは顔をしわくちゃにした。

「オカンのドヤ顔の圧がエグくてさ。ニセモンやて絶対に言われへんやん? やから俺な、『オカン、ありがとう! これでたけいちのサーキット行ってくるわぁ!』言うて、満面の笑みをつくって泣きながら家を飛び出した事、今でも忘れられへんわ」

「TAMAYA製スーパーエンペラー『B』を片手に持って?」と右手でミニ四駆を格好良く持った感じのポーズをキメて、マコトは言った。「そうそう」と僕は笑った。

「駿ちゃん、哀しいなぁ。今の話の登場人物、誰も悪くないやん。全員、善人やで」

「せやろ? 今から思うと、スーパーエンペラー『B』の『B』ってさ」

「おん」

「バッタもんの『B』やったんやろな」

僕の推定を聞いてマコトは白い歯を見せて爆笑をした。僕もケラケラと笑った。

それからマコトとミニ四駆の話題になり、次に昔流行った玩具やファミコンの話題をした。しばらくの間、懐かしい話を続けながら商店街を歩いた。

マコトとどんな話をしていても商店街の何かしらが僕の瞳に飛び込んでくるから、脳裏にはオカンとの思い出が去来した。この商店街には僕とオカンとのノスタルジアがぎゅうぎゅうに詰め込まれているから。

「あ、駿ちゃん? あそこのコロッケ食おか?」

伊藤ハムと刻まれた看板の下で、遮二無二コロッケを揚げている精肉店のおっちゃんを見つけたマコトが言った。「赤チュウ餃子以外、入れへん口やて言うてたやろが!」と再び僕が言うと、マコトは唇を尖らせて受け入れた。

「あのコロッケ屋もオカンとの思い出があるなぁ」

「この商店街って、ほんま、駿ちゃんときよぴーの思い出、詰まりまくりやなぁ」

昭和レトロな昔ながらの大衆大手橋食堂の先を少し歩くとナイス市場という、ナイスな市場がある。その市場の隣に赤い中華の暖簾が見えてくる。それが土曜営業している旨を証明した。それを確認して安堵した餃子マウスを装備したマコトと僕は、味のある暖簾を常連客の所作のような素振りでくぐって席に着いた。

僕の奢りということからなのか、セコいマコトは狂ったように100円餃子を喰らいまくった。餃子を喰らってはコーラをストローでチュウチュウ吸い込み、また餃子を喰らう。

結果九人前の餃子をたいらげたマコト。九人前を食べられようが、単価100円のため900円に消費税だ。財布事情余裕。

この店は本当にコスパ最強だ。マコトの九と僕の三を足した計十二人前の餃子代を支払い、僕らは店を後にした。

※本記事は、2019年11月刊行の書籍『尼崎ストロベリー』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。