産卵をみとどけしわれら海亀の 後追ひもせず茫然とゐる
砂浜に抱かるる卵 二月を 地熱に温められて孵らむ
砂浜に孵りし子亀夜を待ちて 渚をめざしていっせいに駆ける
※本記事は、2016年7月刊行の書籍『歌集 旅のしらべ 四季を詠う』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 旅のしらべ 四季を詠う【第32回】
季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める
最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。
産卵をみとどけしわれら海亀の 後追ひもせず茫然とゐる
砂浜に抱かるる卵 二月を 地熱に温められて孵らむ
砂浜に孵りし子亀夜を待ちて 渚をめざしていっせいに駆ける