第1章 医療

海外内視鏡センター

Hさんが腹痛で緊急受診されました。お腹の単純写真で右上腹部の腸管ガスがU字状に下方に圧排されており胆囊が腫れているようです。腹部のCT検査、超音波検査でもやはり胆囊が大きく腫れ、その中に小さな結石が数個認められます。また胆汁の流れる道である総胆管が太くなり、その中にやはり結石が一つ認められます。

膵臓も少し腫れているようです。遅れて判明した血液データもやはり胆道系の異常と膵炎の存在を示しています。白血球も増加しています。「総胆管に胆石が嵌頓(かんとん)したための胆囊炎および膵炎」と診断されました。

来院された時が金曜日の午後、終業時間まで後1時間もありません。でもあいにく明日から3連休です。早く治療した方がいい。直ちに内視鏡的治療に取り掛かりました。内視鏡で覗くと胆汁と膵液の出口である十二指腸ファーター乳頭の開口部に黄色い石がはまり込んでいます。乳頭も浮腫状に腫れています。

診断した通り胆石の嵌頓でした。石がしっかりはまり込んでいるため管の挿入が少し困難でしたが何度かのトライアルの後ようやく成功。乳頭開口部をバルーン(風船)で拡張し胆石を除去することが出来ました。終わったのは就業時間10分過ぎ。30分強の治療でした。これでHさんは痛みがなければ明日にでも退院が可能です。

母校の名古屋大学がベトナムのフエ市のフエ医科大学に内視鏡トレーニングセンターを開設しました(平成25年9月17日開所式)。指導医が2年間常駐し内視鏡診断および治療の指導を行います。ベトナムでは総胆管結石はほぼ全例が開腹手術で治療されているそうです。