地域の高齢患者の声に真摯に耳を傾ける医師が、その日常を綴る。コミュニケーションに悩む若い医師、必読。自ら「化石医師」と称するベテラン医師が語る、医療にまつわる話のあれこれを連載でお届けします。

単独で良かった

人口2000人程の小さな自治体の保健・医療・福祉関係合同研究会に招かれて参加してきました。18回となる会には村長さんはじめ議会議長さんも参加されていました。

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消防救急隊から保健、福祉関係者まで様々な分野から発表がありました。化石医師が関係ある全国国民健康保険診療施設協議会が今まで提唱してきた、地域包括ケアが近年注目されています。

地域包括ケアの構築には「医療担当者と自治体の首長が車の両輪のような関係となることが肝要」と私達は主張してきました。住民の健康を守るためには地域の経済、環境が大切であり、医療、福祉の切れ目のないサービス提供には、医療と福祉関係者の顔の見える関係づくりが大切です。

かつて日本が貧しく生活環境、職場環境が貧しかった頃結核が蔓延しました。高度経済成長期には空気や川が汚染し四日市喘息や水俣病などの悲劇を生みました。現在でも貧しい発展途上国では様々な感染症が蔓延し、平均寿命が短い。

ベトナムのフエ市に設置した内視鏡トレーニングセンターの話は以前に書きましたが、同じ病気であっても医療水準の差により、入院期間が数日で済むものが1か月近くかかります。

病気に対する十分な知識を有し、その対策を実行できるだけの経済力がないと病気は予防できず、治すこともできません。地域の文化の向上と経済力の強化、環境整備は私達医療従事者だけがどうあがこうと実現できるものではありません。

行政担当者との共同が必要です。それが「車の両輪の如く」です。