第1章 医療

見落とし

検査結果を見落とし、その結果患者さんが死亡した、最近、テレビ、新聞でそんな報道がありました。大学病院でのことです。依頼したCT検査で、読影の専門医である放射線科専門医ががんの存在を指摘していたにも拘わらず、主治医がその記載を見落とし、 その結果患者さんが死亡された、そんなニュースです。

そんな医療過誤が3年間で30件以上もあったということで、1年で10件以上見落とされていることになります。

診察を受けるなら田舎の小さな病院より大きな病院の方がいい。中でも「大学病院だから間違いないだろう。大学病院なら専門医が揃っているから心配ない」。少し思わしくない病になられた時、患者さんはそう思いがちです。

今回の件はそんな専門性重視から生じた悲劇のように思います。

検査を依頼した医師は自分の診ている疾患についての記載を見ただけで、その他の記載に気づかなかった。読影を担当した放射線科専門医は読影する件数が多すぎて報告書の記載がどうしても遅くなってしまう。そのため主治医は自分で画像を見て、放射線科専門医の報告書をあまり読まないなどの問題が提起されています。

今まで何度も書いてきた問題がここにも存在します。診療に訪れる患者さんは一人の人間です。心臓だけの人間、肺だけの人間、 腎臓だけの人間ではありません。ですから心臓だけ診る、肺だけ診る、腎臓だけ診るのでは間違いです。その方の全てをくまなく診て治療を考えることが大切です。