流儀二 大家さん業は誰でも「ウサギとカメ」と知れ

01 急いでもゆっくりでも結果は同じ

不動産投資は、すぐにはもうからない

大バブル経済が崩壊する1980年代の後半まで、不動産投資といえば、安値で買った土地や建物、マンションなどを価格の高騰を見計らって高値で売り抜け、濡れ手で粟のたとえさながらに売却差益(キャピタルゲイン)を得るというものだった。

売却差益が三割なんていうのはあたり前で、ほんの2、3年抱えているだけで倍で売れたなどという夢のよう話もあった。家賃も毎年1割以上あがったこともあったが、地道に大家さん業を続けていくにはたいへんな辛抱がいったはずだ。

しかしそんなふうにボロもうけができたのも過去のこと。いまでは毎月入ってくる家賃(インカムゲイン)をコツコツ積み上げていくのが不動産投資といわれるようになった。

しかし日本はまだいい。ある人から聞いた話だが、東アジアで大家さんがコツコツとある一定期間、家賃を積み上げ、借金を返して利益を出せる国はほかにないらしい。

台湾でも中国でも不動産投資が過熱しているが、あれは日本のバブルのころと同じで、売却差益によるもうけをねらっているのだ。だから目先の利く中国人は、日本国内で不動産を買い、中国版バブル崩壊に備えているという。

ちょっと話がずれたが、もはや日本では不動産投資でボロもうけは期待できず、地道に小さな利益を積み重ねていくのが不動産投資なのだ。

もうけをくらべるには利回りをみる

いまは利回りにして7%もあれば十分といわれる。この本では、あまり難しい言葉や数字はつかわないようにするつもりだが、利回りという言葉は覚えておいてほしい。

一般的に利回りといえば、一定の期間に投下した資金がどれだけ増えたかを示すものだ。たとえば1000万円を1年間にわたって投資した結果1050万円になったとしたら、利益は50万円だから1年間で5%の利益があったことになる。

この場合の利回りは年率5%だ。だから利回りをくらべれば、もうかり具合をくらべることができる。

不動産投資の利回りで気をつけたいのは、表面利回りにだまされないことだ。あとでも触れるが、営業マンがもってくる大家さん向けの不動産情報にのっている利回りは、1年間満室だったときの賃料を不動産の価格でわったものである場合が多い。これを表面利回りという。

表面利回り=満室時の年間賃料÷ 購入価格(建設価格)

だが賃貸住宅は1年中満室であってほしいという大家さんの願いもむなしく、どうしても空室期間ができるものだ。空室ができれば入居希望者の募集が必要だし、退去したあとの部屋はハウスクリーニングや補修も必要だ。

当然、おカネがかかる。保険にも入らなければいけないし、固定資産税や都市計画税など税金もかかる。したがって、実際に入ってきた家賃から、これらの経費や税金などを引いてみないと利益は確定しない。

つまり年間の満室賃料を購入価格で割るという乱暴な方法ではダメだということだ。

利回りの高い物件ほどリスクが高い?

この表面利回りという考え方には、もうひとつ欠点がある。それは立地がよくて入居希望者にも人気の高い物件ほど、表面利回りが低くなりやすい点だ。

どういうことか。ここに年間の満室賃料が同じ賃貸住宅①と②があったとしよう。①は都心の千代田区に②は立川あたりからバスで15分ほどにあると仮定してみよう。建物価格は①が当然高いから、表面利回りは低くなる。また空室になる確率は①の方が低く、また空室が埋まるまでの時間も①が短い。つまり物件②は空室リスクが高いのに表面上は利回りが高いようにみえるのだ。

だから、これから大家さんをはじめようという人は「この物件は利回りがいいですよ」というトークには、あまり耳をかさない方がいい。

もし利回りで賃貸物件を選ぶとしたら、表面利回りではなく、総合利回りと呼ばれるもので判断すべきだ。総合利回りとは、1年間に実際に入ってきた家賃から、募集のためにかかった費用やハウスクリーニング代など、さまざま経費や税金を引いたものを賃貸住宅の購入費(建設費)で割ったものだ。

総合利回り=(実際の家賃総額ー経費・税金等)÷ 購入価格(建設価格)

大家さん業は競争ではない。最終的には同じ位置にいる

仮に先ほどふれた総合利回りが5%と4.%の物件があったとしよう。購入額は銀行から借り入れた同じ1億円。5%なら年間500万円が手元に残り、4.5%なら450万円が残る(所得税などはここでは無視)。それを1億円の返済にあてる。すると5%なら20年で完済でき(同じく利子は無視)、4.5%だと22年とちょっとだ。

この2年と少しの差をどう考えるか。

私はいままで、長い間大家さん業をやってきたが、こうした利回りの比較だけで物件を選んだことはない。2年ちょっとの差はあるが、銀行から借りた1億円を返済するというゴールにたどりつくという意味で、どちらも大差はないと思う。

投資にかぎらずビジネスは全て「ウサギとカメ」。速度を競っても意味はない。はやく行っても、ゆっくり行っても最終的には同じ位置になる。そうであれば、少しずつコツコツ積み上げた方がよい。それが私のモットーだ。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『年収400万円でも大家になれる 工務店社長が教える5つの流儀』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。