核心2

6 エレベーターの有無

EV(エレベーター)のメリット

マンションやアパートの住居者にとってエレベーターは便利だ。特に上階の入居者にとっては、荷物の上げ下ろしも楽で、エレベーターがあると賃貸を紹介する時の案内受けもいい。でも、大家にとって気になるのが、やはりコストや維持管理。

エレベーターの設置は建築基準法や高齢者の居住の安全確保に関する法律に記載されており、建築基準法では、7~10階建てのビルやマンションに相当する高さ31メートルを超える建物には「非常用の昇降機」を設けなければならないとしている。

では、エレベーターのメリットは何か。ひとつは、階段の昇降が不要で重い荷物を運ぶ時などは楽だということ。これから部屋を借りる人に物件を案内する時などはアピール材料になる。

昨今のブームで人気が出ている自転車も、エレベーターがあれば、高額な自転車を部屋に近い共用部に置くことも可能など、建築プランのひとつとして、とても重要なアイテムであることは間違いない。

EVがある物件と、ない物件

土地の利用価値という視点でエレベーターが「ある物件」と「ない物件」、どちらが有利かということを考えてみる。まずエレベーターを設置するためには、エレベーターが昇降する場所を確保しなければならず、その分のスペースが必要になる。

1LDKであればだいたい部屋数がひとつ少なくなる。つまりエレベーターは入居者にメリットを提供する一方で、大家にとっては部屋数が減ることで利回りが低くなるというデメリットがある。

さらに「ある物件」はエレベーターの管理費用や、新築であればアパート・ マンション建設時の設置費用が掛かる。エレベーター管理は共益費や管理費として入居者に負担を求めることもあるので、少しでも安い物件に住みたいと考える入居者の部屋探しにおいてはマイナス要素を生むことも考えられる。

EVのある物件と、ない物件の家賃収入

エレベーターを設置するには、1フロアに最低でも5平米の施工面積が必要になる。単純に部屋数がひとつ減ると考えていい広さだ。

そこで、5階建てでエレベーターが「ある物件」と、4階建てでエレベーターが「ない物件」を、建物を建設して家賃収入を得るという観点で比較してみる。

月の家賃は「ある物件」が、5階建てで各階に3部屋の計15部屋、月の家賃を5万円に設定すると、月額家賃収入は75万円。「ない物件」は、4階建てで各階4部屋の計16部屋ということになるので、月額80万円になる。

これに大 家が支払うエレベーター管理費を5万円として差し引くと、「ある物件」と「ない物件」の月収入は10万円の差が出る(図1)。

[図1]エレベーターの有無による家賃収入の比較

EV設置と建築コスト

エレベーターの設置費用(工事費)は1フロア約150万円。土地代が一緒で、1部屋の建築に700万円掛かり、家賃を5万円とするなど前提条件を一緒にして建築コストを比較した場合は次の通りだ。

4階建てでエレベーターが「ない物件」は、家賃が4部屋×4階=16部屋で 家賃収入が年間960万円、建築費は16室×700万円で1億1200万円となり、土地代は2240万円で、利回りは約7.14%。

一方、5階建てでエレベーターが「ある物件」は、エレベーター設置費750万円(150万円×5フロア分)、家賃が3部屋×5階=15部屋で家賃収入が年間900万円、建築費は15室×700万円で1億500万円となり、土地代は2240万円で、利回りは約6.67%。

ざっくりとした計算だが、ざっと1000万ぐらいの差が生じている。土地の価格は同じでも、エレベーターの設置分の費用が余分に掛かり、部屋数も違う。もうお分かりだと思うが、私は4階建てでエレベーターが「ない物件」を提案してきている。

※本記事は、2019年8月刊行の書籍『大家業は寝ててもチャリンチャリン 工務店社長が教える4つの核心』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。