流儀一 発想を変えよう

06 単身者をターゲットにするメリットはこれだけある

学生より長く借りてくれるのもメリット

大家さんにとって何よりありがたいのは、4年間で卒業してしまう学生にくらべてサラリーマンの単身者は、転勤でもないかぎり、気に入った部屋には長く住んでくれる傾向にある点だ。

しかも最近では男女とも結婚する年齢が遅くなり、以前と比べて独身でいる期間が伸びた。日本社会の大きな課題である少子高齢化の影響は、賃貸住宅業界にもおよんでいるが、単身者向けのマンションやアパートに限ってみれば、今後も市場は明るいとみていい。

後に詳しく述べるように大家さんにとって、頭が痛いのは住んでくれる人が定着せず、空き室期間が増えることだ。それをふせぐためにあれこれと知恵をしぼるわけだが、うまくいかない場合も多い。

その点から考えても、今後も安定した需要が見込め、比較的長い期間住んでくれることが期待できる単身者層は、ターゲットとして狙い目といえるのだ。

北向きの間取りでも気にしない単身者

20代から30代のサラリーマンで単身者とくれば、男性女性を問わず生活パターンはほぼ決まっている。平日は昼間会社で働き、夜は遅く帰って寝るだけ。仕事中心の生活だ。

したがって部屋を選ぶ際も、新婚カップルやファミリーと違って陽当たりをあまり気にしない。たとえば南側に道路があるような敷地で奥行きがない場合、どうしても北向きの部屋が多くなるが、単身者向けの賃貸住宅なら問題なく建てられるということだ。

また私は、共用通路や階段が中心部にあり、それを取り巻くように各部屋を配置するスタイルのマンションを好んで建てるが、その際にできる北向きの角部屋も、単身者からは「光が柔らかくて落ち着く」とかえって人気のでる場合さえある。

思わぬ場所にある単身者向けマンションの好適地

そんな単身サラリーマンである彼ら、彼女らは、職住接近を好む場合も少なくないから、学生やファミリーが嫌うような場所でも、好んで住んでくれることがある。

たとえば、郊外に展開するAEONのような大型商業施設の近くや、大きな工業地帯の周辺などだ。

こうしたエリアでは多くの単身サラリーマンが働いているが、住宅地としての開発が遅れていたり、人気がなかったりして単身者用のマンションが少ない場合がある。思わぬ場所にあるこうした単身者向けマンションの好適地、ここを狙うのだ。

1棟マンションの大家さんだから狙える

1棟マンションや1棟アパートの大家さんになる醍醐味は、こうしたエリアに単身者向けマンションを計画し、実際に建ててしまえるところにある。大型商業施設や工業地帯などの周辺にある隠れた単身者向けマンションの需要を掘り起こすわけだ。

同じ大家さんでもマンション(区分所有建物)の専有部分だけをターゲットにしていると、こういう「攻めの発想」はでてこない。そこにだれかがマンションを建て分譲してくれないことには、こういうタイプの大家さんは手の出しようがないからだ。

私がすすめる1棟マンションの大家さんなら、こうした隠れた適地をみつけて、すばやく賃貸住宅を建て、もっともおいしい蜜を味わうことができるのだ。

まだまだある。単身者向けマンションの少ないエリア

大型商業施設や工業地帯の周辺以外にも、ある事情から単身者向けマンションが少ないエリアというのがある。

よく知られているのが、東京都心のワンルームマンション規制だ。東京都心で単身者が部屋を借りようとすれば1LDKはおろか1DKも金銭的に難しい。どうしてもワンルームマンションに偏りがちだ。

そのため過去にワンルームマンションが乱立し、周辺の住環境に悪影響をおよぼすという声があがり、新規の建設が事実上、難しくなった。そのため東京都心では新規のワンルームマンションの供給がなくなり、売買市場でも賃貸市場でもワンルームマンションは人気になっている。

これは極端な例だが、地方の自治体の中にも、一定の大きさ以下のマンションを規制し、居住環境をある方向に誘導しようとしている自治体がある。その際に利用されるのが建築基準法で定められた開発負担金を課す仕組みだ。

こうした仕組みが最近まであった自治体をさがせば、そこが単身者向けマンション建設の狙い目エリアといえる。

また最近になって人口が急増している区や市町村を狙うのもひとつの方法だ。こうした自治体では人口の急増に合わせて住宅の数を増やそうと、幹線道路沿いなどで都市計画に緩和措置を設けている場合がある。

そこでは、たとえば住居系の用途地域の場所で近隣商業地域と同等の建ぺい率・容積率が適用されることがある。そのため、いままでせいぜい2階建てアパートしか建てられなかった場所に、3階建ての低層マンションが建てられる場合もあるのだ。