流儀二 大家さん業は誰でも「ウサギとカメ」と知れ

02 もうかったら新しい物件につぎこむ

目標はあくまで通過点にすぎない

私は流儀一の中で「目標は高く掲げるが、それを越えてはいけない」と書いた。そこで私が強調したかったのは、目標を決めたらそこに向かって集中しろということだった。

不動産投資に興味をもつと、本を読んだり人の話をききかじったりして「あれも」「これも」と無計画に手を広げる人が少なくない。それではダメだ、ということがいいたかったのだ。

それと一見、矛盾するようだが、ここでは目標を達成したら次の目標にチャレンジきだ、という点を強調したい。

あとで詳しく説明するが、私はいままで本業の工務店とは別に、いくつもの会社をつくってきた。たとえば「賃貸マンション20棟購入費(土地建物20億円)」という目標を設定したら、その目標を達成する受け皿として会社をひとつつくるのだ。

そしてその目標を達成したら、また新しい目標をたて、新しい会社をもうひとつつくる。私はこうしては、ゆっくりと、しかし確実に自分の所有する1棟マンションの数を増やしてきた。目標は、あくまで通過点にすぎないのだ。

ビーカーにちょっとずつ利益をためていくのが大家さん業

わたしはよく自分がたてた目標をビーカーにたとえることがある。大家さん業というのは、月々いただく家賃から銀行への返済を行い、残りのわずかな利益を、すこしずつビーカーに集めていくようなものだと思うことがあるからだ。

少しずつしか、たまってはいかないが、しんぼう強く続けていれば、いつかはいっぱいになってくれる。

しかしビーカーばかり増やしていたら、どうなるだろうか。なかなか水はいっぱいにならない。ひとつのビーカーにゆっくりとではあるが確実に水がたまっていくイメージと、カラに近いビーカーばかりがならんでおり、あちらにポツリ、こちらにポツリと水が落ちているイメージをくらべてみてほしい。どちらがプラスのイメージかは、いうまでもないだろう。

ひとつのビーカーがいよいよいっぱいになったら、つぎの目標をたてるタイミングがきたということだ。

ビーカーがあふれたら、つぎのビーカーを用意する

このビーカーこそが、私のいう「大家さんとしての目標」であり、その目標を達成するためにつくった受け皿会社である。

もちろん目標のたてかたはいろいろある。たとえば、あるエリアを想定してそこに一定の数の1棟マンションを建てるとする場合もある。またある既成の大型マンションを対象に単身者向けの専有部分をすべて買い進むという目標をたてる場合もあっていいだろう。

こうして目標を達成し、いっぱいになったビーカーができていくと、こんどはビーカーがあふれことになる。

銀行から借りたおカネを完済し利益が増えてあふれる場合もある。また大型マンションの専有部分を買い進めていくうち、予定の戸数をオーバーしビーカーの容量をこえてしまうこともある。私が自分の所有する賃貸住宅の売却を考えるのは、こんな場合だ。

大家さん業でもうかったおカネはつぎの物件につぎこむこと

私は自分が所有している賃貸住宅は原則として売らないことにしている。その理由はまず、売る理由がないことだ。私にとって大家さん業は副業であり、生きていくのに必要なおカネは本業である工務店の社長としての給与で十分だ。

また大家さん業の受け皿としてつくった会社は、将来子どもたちへの財産分与を想定しているが、まだ子どもたちは幼く、いまのところ売却益を出さなければならない差し迫った事情はない。

したがって、もし売却する場合は、よほど条件のいい物件を買ってくれないかという話が持ち込まれて、いままで持っていた物件と入れ替えるような場合しか想定できないのだ。

わたしはこうした場合に売却益が出たとしても、それは自分のためにつかったり、家族のためにつかったりせず、そのとき自分が設定している目標を達成するためにつかうことを自分に科している。

ビーカーからあふれた水(利益)は、つぎのビーカーにもどしてやる。つまり大家さん業でもうかったカネは新しい次の物件につぎこむことが大事なのだ。

物件の維持管理に投資をおしまないことも大切

大家さん業の「もうけ」は、つぎの目標のために投資しろと述べた。もちろんそれも大切だが、その前に、自分の物件の維持管理に、おカネを惜しまないことが前提になる。

物件の維持管理の具体的なノウハウは、あとで詳しく述べるが、ここでは大家さんをやる上での心がまえとして述べておく。

ポイントはビーカーの中にたまる水(利益)の量を多くしようとあせらないことだ。さきほどから大家さん業をビーカーに水をためるイメージととらえているが、こういう話をすると「じゃ、水がたまる速度をあげればいい」と考える人が必ず出てくる。そうすればビーカーはすぐにいっぱいになり、つぎのビーカーに移れると。

そしてそれを実現するためにどうしたらいいかと考え、たどりつくのは経費の削減だ。業者に委託した清掃の回数を減らす。入居者が退出したあとのハウスクリーニングの費用も削る。そのほかすぐに「利益」を出そうとすれば、削れる経費はいろいろあるようにみえる。

しかし、ここでも「ウサギとカメ」の警句を思い起こしてほしい。あなたの賃貸住宅の維持管理の経費を削って、無理に利益をあげることが、ほんとうに目標達成の助けになるのか。

私はそうは思わない。利益が出たら物件の価値を上げるためにどんどん投資する。個別の物件だけでなく共用部分にも投資し、美観をたもち、入居希望者に思わず「この物件に住みたい」といわせるような物件に育てることが大切であり、同時にそれが大家さんの醍醐味なのだ。

そうすれば将来、必ずやってくる家賃の低下を少しでも食い止めることにつながる。歩みはカメのようにのろくても確実に目標達成につながるのだ。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『年収400万円でも大家になれる 工務店社長が教える5つの流儀』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。