【前回の記事を読む】持って行くのは買い物カゴではなくボウル!…豆腐屋さんへのおつかい

第1章 おつかいとは?

2 息子の「はじめてのおつかい」

息子の「はじめてのおつかい」は、幼稚園に行き始めた4月のこと。絵本『はじめてのおつかい』のような買い物ではありませんが、親である私に頼まれて挑んだドキドキ体験。

当時、彼は絵本の中のみいちゃんより1つ下の4歳でした。私は父親の故郷である三重県の県立高校教員となり、津市に自宅を建て、妻と息子と3人で暮らしていました。東京生まれ、神奈川育ちの私が暮らしたこともない三重に墓守りにやって来た、いわゆる「Iターン」。ここにも冒険好きの私の素顔が……。

私の両親は私が育った川崎の家に暮らしていました。息子が入園したのは2年保育の公立幼稚園。私立のように派手な鼓笛隊やひらがなを教えてくれるわけでもなく、外でひたすら遊ばせてくれるという教育が気に入って入園させました。

3年保育が主流となる中で、津市立幼稚園は「私立の経営圧迫をしない」との理由で3年保育には踏み切らず、そのジリ貧状態を何とか食い止めようと週1回程度『チューリップ教室』と称して、午前中に3歳児の無料教室を実施していました。私は息子を連れてそこへ通い、園の良さが十分わかっての入園でした。

なぜ、県立高校教員の私が息子を連れて平日午前中の『チューリップ教室』に通えたかというと、勤務先が夜間定時制高校だったのです。「イクメン」などという言葉もない時代で、男親の保護者など私以外にいませんでしたが、主婦の妻を差し置いて、私は息子とこの教室に通うことを楽しみました。

津市の公立幼稚園がジリ貧となってきていたのは、「2年保育」とともに「保護者が園への送り迎えをしなくてはいけないこと」も足かせとなっていました。バスで送迎してくれる私立より、保護者の負担は遥かに大きい……ただ、私には、幸いにも時間があったので『チューリップ教室』の時代から、息子と片道1キロほどの散歩を楽しみました……つまり、歩いて通っていたのです。

さて、息子が入園した4月早々、我が家に危機が……第2子を妊娠中の妻が、お腹の子のトラブルで入院することになってしまったのです。料理も洗濯も……まあ、何とかするしかないのですが、問題は息子です。

幼稚園へ送って行くことはできても、お弁当のある日は迎えに行く時間帯は既に勤務時間中。たとえ迎えに行けたにしても、4歳児を一人残して夜の学校に働きに行けるとは思えず、川崎の両親に助けを求めました。当時、母はパートに出ており、リタイアして家でブラブラしていた父が来てくれることに……かくして、男3代の奇妙な合宿生活がスタートしたのです。