第1章 おつかいとは?

1 真っ赤な手の豆腐すくい

日曜日の夕方、テレビで『サザエさん』を見ているとカツオがおつかいに行くシーンが出て来ました。

サザエが買い物を頼むと、カツオは「(遊ぶのに)忙しいから」と断って出かけるが、豆腐屋の移動販売を逃した裏のおばあさんに会い、商店街の豆腐屋さんにおつかいに行ってあげる。帰りにサザエとバッタリ出会い「外面がいい」と呆れられる……(作品No.8253「カツオの外面」2021.6.13)このお話の途中、豆腐屋さんにおつかいに行くカツオの手に、おばあさんから受け取ったボウルがあるのを見て、私自身のおつかいを思い出しました。

私は小学校4年生までを東京都世田谷区梅ヶ丘で過ごしました。(1963年生まれなので、ここからは1970年代の話です。)

世田谷でのおつかいの記憶は、父に頼まれてタバコ屋さんにハイライトを買いに行ったこと。ハイライトは当時、恐らく一番売れていた銘柄。

さすがに『はじめてのおつかい』のみいちゃんのように幼児ではなかったと思いますが、小学生が父親に頼まれてタバコを買いに行く……

今ではいろんな意味で考えられないおつかいですね。

買い物ではありませんが、父の忘れ物を職場に届けに行った記憶があります。

小田急線の梅ヶ丘駅から各駅停車に乗って8駅目の新宿駅へ。

そして地下道を歩いて父が勤める銀行の東口支店まで……

たぶん、小学校低学年の時だったと思います。

父が仕事に行っていたということは平日であり、学校は夏休みなどの長期休み中だったのでしょう。私には5歳と8歳下の妹が2人いますが、恐らく、下の妹が母のお腹の中にいる状況で、私が行かざるを得なかったように推察されます。

小田急線の各駅停車は新宿駅の地下ホームに着きます。

そこからそのまま国鉄(現JR東日本)への乗り換え改札を通り、地下通路を突っ切り、国鉄の東口改札を出て地下道を迷わず父の支店まで行けたことは、我ながら“よくできたな~”と思います。

たぶん冒険好きの私が「行く!」と申し出たのであり、これが実質私の「はじめてのおつかい」だったと言えます。