2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

9 子どもの食と栄養

脂質とは

脂質は炭素・水素・酸素で構成されていて、消化酵素である膵リパーゼにより、脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸で吸収される。消化された脂肪酸は肝臓に送られ、一部は筋肉や皮下脂肪に蓄えられる。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、飽和脂肪酸はとりすぎると、肝臓でコレステロール合成が促進され、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値や中性脂肪値が上がり、動脈硬化の原因になると言われる。

一方、不飽和脂肪酸はHDLコレステロール(善玉コレステロール)値を上げ、LDLコレステロール値を下げ、動脈硬化などの原因となる血栓の形成を防ぐと言われている。不飽和脂肪酸のうち、体内で合成されず、食物で取らざるをえない脂肪酸を必須脂肪酸と言い、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAが該当する。

ミネラルとは

ミネラルは無機質とも言われ、炭素・水素・酸素・窒素以外の元素を言う。量的には身体の約三%を占め、身体機能の調節と身体の構成(骨・歯・肉・皮膚・臓器・血液等)となる。

人体には約四〇種類のミネラルが存在し、多量ミネラルと微量ミネラルに分けられる。多量ミネラルはカリウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンである。

カルシウムは九九%が骨・歯に存在し、不足すると成長阻害となる。ナトリウムは体液に含まれ、不足すると、疲労や筋肉けいれんの原因になる。カリウムは細胞内に存在し、不足すると、筋力低下や麻痺の原因になる。マグネシウムは六〇%が骨・歯に存在し、不足すると成長阻害の原因となる。リンは八〇%が骨・歯に存在し、不足時、骨・歯がもろくなる。微量ミネラルは鉄、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、クロム、セレン、モリブデンなどである。

ビタミンとは

ビタミンは身体の機能を調整する栄養素であるが、体内では合成できないか、合成できても十分でないため、食物から取る必要がある。またビタミンは油に溶ける脂溶性ビタミンと、水に溶ける水溶性ビタミンとがある。

脂溶性ビタミンはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの四種類で、身体に蓄積されるため過剰摂取の場合には健康障害の可能性もある。一方、それぞれ不足時の障害の影響も理解する必要がある。

水溶性ビタミンはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸がなどである。それぞれ不足時の障害の影響も理解する必要がある。

乳児では七〇%が水分である。そしてその水分の六七%が全身の細胞内に存在し、三三%が血液として存在する。体内の水分の一〇%を失うと健康障害が起き、二〇%失うと死亡の危険性が高まる。

特に乳幼児は腎臓の機能が不十分なため、水分摂取量が少ないと体内の不要な尿素などを排泄できず、さらに下痢や嘔吐をした場合、大量に水分を失うので、脱水症状を起こす危険性がある。体内の水は、栄養素を血液などで身体の各組織に送る、老廃物を身体の外へ排泄する、発汗により体温調節を行う、体液の浸透圧を調節するなどの働きをする。

私の担当する組でも、子どもたちへの水分補給には、絶えず注意を払っている。子どもの中には、あまり水分を取りたがらない子もいる。それでも保育士として焦らずに、一口ずつでも飲ませる工夫と配慮が欠かせない。

食育とは何か

食事の洋風化やファーストフードの展開などによる変化、核家族化や生活の夜型への変化、生活習慣病の問題やダイエット・ブームなど食についての諸問題が顕在化してきている。

このような食をめぐる見直しが必要とされてきている。つまり、日本国民一人ひとりが食について意識を高め、自然の恩恵や農業・漁業従事者などの生産者などの食にかかわる人々への感謝の気持ちを持ち、食に関する知識と判断力を身につけることで、心身の健康を増進し、健全な食生活を実践できるように考えられたのが、食育である。

食育の理念や方針や国・地方公共団体・国民の役割りを推進するために、二〇〇五年に「食育基本法」が制定された。私の担当する組でも、定期的に調理師の協力を得て食育の実践を心がけている。

保育所での食育の推進

「保育所における食育に関する指針」とは、二〇〇四年に厚生労働省によって制定された「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」を指している。この指針において、食育の目標として、下記の子ども像を目指している。

①お腹がすくリズムのもてる子ども
②食べたいもの、好きなものが増える子ども
③一緒に食べたい人がいる子ども
④食事づくり、準備にかかわる子ども
⑤食べものを話題にする子ども

実際、私の担当する組で、十一時頃になると、「僕、お腹すいたな~」という子どもがいて、ほほえましい。台車で昼食やおやつを運んでくると、子どもたちは一斉に台車の中の食べ物や飲み物を興味津々で覗く。興奮気味の「早く食べたいな~」の声。デザートがある日は「やった!」と喜びの声が上がる。

また、調理師の先生に協力していただき、子どもたちが泥のついた枝豆の枝から枝豆をむいたり、子どもたちがトウモロコシの皮をむき、ひげを取ったりして、自然の食材に触れたりしている。

そして昼食やおやつで、子どもたちが準備した枝豆やトウモロコシが調理されて食卓に並ぶ。自分がかかわった食材が調理されて味わえることへの驚きと喜び。子どもたちは、帰宅後、保護者にその体験と味をうれしそうに話す。翌朝、保育士は保護者からそんな親子の会話のフィードバックを受ける。

また毎日、子どもたちが交替制で二人のお当番が昼食やおやつの配膳のお手伝いを喜んでしている。お当番になると大喜びし、外れるとがっかりする子どもたち。保育士はお当番を頑張った子どもをみんなの前で褒める。

保育士は子どもの当番の頑張りをその子の連絡帳に書きとめ、保護者に伝える。自宅で、保護者は子どもを褒めて、子どもから感想を聞く。うれしくなった子どもはまたお当番をやりたくなる。

肉が好きで、野菜をほとんど食べなかった子どもが、保育士の粘りで少しずつ食べるようになる。褒めることで、もう少し食べるようになる。

他の子どもがモリモリ食べるのを見て、少しずつ食べ始める子どももいる。また、おかわりに並ぶ子どもたちもいる。おかわりをもらい、うれしそうに自分の席に戻る子どもを見ると、こちらまでうれしくなる。

大きめの植木鉢にきゅうりとなすを植え、毎日、子どもたちと水やりをする。芽が出て、葉が大きくなり、花が咲き、実がなる。実ったきゅうりが、八百屋さんのきゅうりと同じだと気が付いた子どもたちのうれしさと喜び。

そして自分たちが育てたきゅうりを自慢する。少しずつ食育を実践し、保育士自身も成果が出るとうれしくなり、また食育の工夫をするようになる。

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。