2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

10 保育実習理論

造形表現に関する技術

二つ目の表現に関する技術は造形表現である。絵を描くことには、自信があったが、意外と理論として知らなかったことが多く、思ったよりも苦戦した。

幼児と造形表現

子どもたちが画用紙にクレパスなどで何かを描いたり、粘土などをこねて何かを作ったりする行為は、保育所での子どもの遊びの一環で行われる。

その場合、保育士がクレパスや画用紙、粘土、粘土板を用意してテーマを決めて始めることもあれば、子どもたちが自主的に、自由に自分の思いのままに描きたいもの、作りたいものを決めて行う場合もある。

またブロックや積み木などで、自由にいろいろな形を作って想像遊びをすることもある。まさに子どもの自主性が大事である。私自身の反省の意味も含め、ついつい保育士が手を貸したり、きれいに描こうとか、上手く作るという意識は不要である。

一人ひとりの心のあるままに、保育士は子どもに寄り添う姿勢が大事である。その繰り返しによって、子どもは経験し、心を安定させ、成長していく。

幼児期の絵画

いわゆる幼児画は、次のように子どもの年齢によって変化、発展していく。

一~二歳半では、偶然に、子どもがクレパスや鉛筆を手にして書きなぐったら、何かが描かれていたというもので、ぐちゃぐちゃな線の場合が多い。この時期を、なぐりがき期、乱画期とも言われている。

五歳以降では、子どもの絵はさらに発展し、画用紙の中に地面(基底線)が描かれる。

ほかにも幼児画の特徴として次のような傾向が見られることがある。

拡大表現:自分が描きたいものを大きく、詳しく描く。
反復表現:自分が描きたいものや好きなものを繰り返し描く。
視点移動表現:ものを上から、横から、視点を移動させて描く。一枚に視点が混在する。
空間表現:画用紙の中央を大きく開けて、人やものを天地に描く。
同時同存表現:一枚の画用紙の中に、過去・現在・未来が共存して描かれる。
代償行為:上手くいかなかった場合、描いた絵を他のクレパスなどで塗りつぶす。

幼児への造形指導

子どもが感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。

表現に関する保育のねらいには次の三点をあげている。

・まず、いろいろな物の美しさなどに対する豊かな感性を持つ。
・また、感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
・そして制作の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。

また表現に関する保育の内容(抜粋)は次のような点をあげている。

・水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。

二歳半~三歳では、描くだけでなく、描いたものに名前を付けて、後から意味づけをする。この時期を命名期、意味づけ期とも言う。

三~五歳では、この頃の子どもは人を描くと、ボディーがなく、顔から直接に手足が出ている人(頭足人)を描くことが多い。絵を画用紙いっぱいに描く子どもも多く、カタログ期とも言われる。また太陽や花など人間でないものに笑顔を描くアニミズム表現も見られる。

・そして生活の中で様々な音、色、形、手触り、動き、味、香りなどに気付き、楽しむ。
・また生活の中で様々な出来事に触れ、イメージを豊かにする。
・感じたこと、考えたことなど音や動きで表現したり、自由にかいたり、作ったりする。
・いろいろな素材や用具に親しみ、工夫して遊ぶ。
・描いたり、作ったりすることを楽しみ、それを遊びに使ったり、飾ったりする。

ちなみに私の担当する組では、子どもたち一人ひとりに、粘土、粘土板、糊、ハサミ、お絵かき帳、クレパス、一二色鉛筆などを用意して、子どもたちが楽しく描画や造形ができるようにしている。

また子どもたちが遊びながら自由に造形活動ができるように、いろいろなおもちゃを用意している。

描画や造形で保育士としての留意することは、子どもたちがきれいな絵や美しい作品を作ることでなく、描いたり、作ったりすることがいかに楽しく面白いかを子どもたち一人ひとりにわかってもらうことである。

また子どもたち一人ひとりには個人差があることも踏まえ、画一的な指導をすべきではない。その絵や作品を子どもがどのような気持ちで描き作成したかに思いを巡らせ、子どもの気持ちに寄り添うことが大事である。

絵や作品のテーマ設定も大事であるし、子ども同士の共同作品も良い効果を生むことがある。子どもたちの絵や作品を保育室や廊下に飾り、子ども同士がお互いに絵や作品を共有でき、かつ保護者が子どもの成長を確認できるので重要である。

言語表現に関する技術

三つ目の表現に関する技術は言語である。言語ついては、それなりに自信があったが、肝心な保育所で働いた経験がなかったので、道具としてのペープサートやエプロンシアターなどイメージがつかなかった部分があった。

乳幼児は周りの人の声や様々な音を耳にして、声や音を理解し反応したり、声に出して成長していく。乳幼児の言語の発達については、既に「保育の心理学」で触れたので割愛する。

幼児への言語指導

保育所保育指針では、次のように言語指導について触れている。

保育の目標の中で、「生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。」

また発達過程の中で、「おおむね三歳では話し言葉の基礎ができて、盛んに質問するなど知的興味や関心が高まる。おおむね五歳では言葉により共通のイメージを持って遊んだり、目的に向かって集団で行動することが増える」と言及している。

さらに言葉に関するねらい及び内容の中で、

「経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う」

と述べ、ねらいを三つ掲げて、

「自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。日常生活に必要な言葉がわかるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、保育士等や友達と心を通わせる」

と規定している。

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。