2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

10 保育実習理論

保育士の自己評価と改善そして保育所の自己評価と改善と公表

保育所保育指針では、「保育士は保育の計画や保育の記録を通し、自らの保育実践を振り返り、自己評価を通し、専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない」とある。

また保育所保育指針では、「保育所は、保育の質の向上を図るため、保育の計画の展開や保育士等の自己評価を踏まえ、当該保育所の保育の内容等について、自ら評価を行い、その結果を公表するよう努めなければならない」

児童福祉施設の施設及び運営に関する基準では、保育所業務の質に対する評価と改善の義務と、外部による第三者評価と結果公表と改善を務めること(努力義務)としている。

音楽表現に関する技術

三つの表現技術のうち、私は、造形表現と言語表現については自信があったが、音楽表現は苦手で辛い科目であった。でも保育士になるためには、乗り越えなければならない課題だった。実際に保育所に保育士として勤務すると、とても大事な技術であった。

乳幼児に対する音楽

乳幼児の成長に伴い、子どもの音楽への反応は次のように変わっていく。胎児期後半では、話しかけや音楽に反応すると言われる。乳児期では、音に反応し、顔を音の方に向けたり、ガラガラの音を楽しむ。乳児が出す音声を聞いてそれを聞いた大人が喜ぶと、さらに乳児が喜ぶこともある。

二歳児は、音楽に合わせて身体をゆすり、身振りを真似したり、駆けまわったりする。
三歳児は、音域が広がり、音程も安定する。リズムが少しずつ取れるようになる。
四歳児は、歌に対する意欲も盛んになる。歌の音程や強弱、速さなどの違いを理解する。
五歳児は、歌いながら、手でリズムが取れる。メロディを聞き分ける。

幼児に対する音楽指導

幼児への音楽やリズムの指導は非常に重要で、音楽を通して子どもの感性を豊かにすることを狙っている。具体的には、リラックスして歌ったり、楽器を演奏やリズムを楽しむことで表現する喜びを味わう。また音楽に親しみ、音楽を聴くことに興味を持つこと。さらには、感じたことや見たこと、考えたことを音やリズム、動きで表現することなどである。

私の担当する組では、いろいろな場面や状況で音楽を実に多く使う。例えば、朝の会では、「朝のうた」を毎朝みんなで歌い、その月にふさわしい歌などをみんなで数曲歌う。またお帰りの会では、「おかえりのうた」とその月の歌などを再度歌う。

子どもたちは、歌うことを楽しみ、また音楽にあわせて、身体を動かしたり、振り付けを楽しむ子どももいる。また毎月のお誕生日会や、運動会など、イベントでは必ず、歌を歌ったり、音楽に合わせて踊ったりする。このように音楽は保育所では大事な遊びの要素であり、教育の要素である。

幼児向け音楽・リズムの指導のねらい

保育所保育指針では、幼児向けの音楽・リズムの指導のねらいや内容を示している。

ねらいでは、いろいろな物の美しさなどに対する豊かな感性を持つ。また感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。そして生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。

内容(一部抜粋)では、次の四点をあげている。

② 保育士等と一緒に歌ったり、手遊びをしたり、リズムに合わせて体を動かしたりして遊ぶ。手遊びとは、わらべ歌などと手指を使う子どもたちとの遊びで、子どもと楽しくコミュニケーションを図れるだけでなく、子どもの「聞く」「見る」「まねる」といった能力への教育効果も抜群にある。

③生活の中で様々な音などに気付いたり、感じたりして楽しむ。

⑥感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現する。

⑧音楽に親しむ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう。

楽譜を理解する

楽譜は音楽の基本中の基本である。

音符の種類(全音符、二分音符、四分音符など)で音の長さを表し、音部記号(ト音記号やヘ音記号)や変化記号(シャープ、フラット、ナチュラルなど)、速度記号(メトロノーム記号)、速度標語(アンダンテ、アレグロなど)、強弱記号(ピアノ、フォルテなど)、曲想標語(アカペラ、カンタービレなど)などで曲をどのように歌うか、演奏するかなどを示す。

音程とは、二つの音の間の高さの幅を言い、同じ音同士は一度、一つの差は二度となる。また半音と全音(半音が二つの関係)があり、完全音程、長音程、短音程、減音程、増音程を理解する。 

音階とは、最初の音から一オクターブ上まで並んだ音列のことをいい、長音階(長調)と短音階(短調)がある。

転調とは一つの曲の中で、調を変えること。例えば曲中にト長調からホ短調へと変えることで、曲に変化を与えるねらいがある。


移調とは曲全体の調を変えること。例えば、子どもが歌いにくそうな場合、ハ長調を二長調に変えたりすることがある。ただし、長調は長調に、短調は短調に移調する。このあたりは理解するのに本当に苦労した。

[図表1]速度標語の例