2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

8 子どもの保健

「子どもの保健」の勉強の工夫

筆記試験の七科目目は「子どもの保健」である。「子どもの保健」では、成長・発達していく乳幼児の健康と安全をいかに守るかがポイントである。実は「子どもの保健」は「子どもの食と栄養」と並んで、暗記しないといけない内容がとても多いので、筆記試験の準備は特に入念にする必要がある。

ただし、「子どもの保健」で学ぶ内容は保育士として日々の保育に直結するので、一つとして無駄はない。子どもの命を守るという意味で「子どもの保健」に真剣に取り組む姿勢が大事だ。

子どもの疾病は非常に多く、その症状と対応策はまず出題されると考えたほうが良い。また感染症もその特徴や症状、対応策が必ず出題される。当然ながら感染症対策(消毒・手洗い・予防接種)も出題される。子どもの発達障害(自閉症やアスペルガー症候群など)・精神障害(統合失調症など)・知的障害も理解が十分か問われる。

そして保育所での衛生管理や安全管理そして事故防止と避難訓練も出題されるので、しっかり勉強することである。「子どもの保健」は筆記試験の中で、保育所で最も実務的で役に立つ科目と言える。

保育の中での子どもの健康

子どもは成熟に向かって成長し続けているが、その未熟性のために病気にかかりやすく、事故にも遭いやすい。したがって、保育士は、子どもの異常に直ぐに気づき、病気やけがを未然に防ぐことは、保育の仕事の中で非常に重要である。子どもの命と健康・成長を守るために、保育士は一人ひとりの健康状態を常に十分に観察し、状態を適切に判断する知識・技術・態度が重要である。

子どもの保健では、多くの疾病、感染症、子ども特有の病気、子どもの発達障害、子どもの精神障害、子どもの知的障害など学ぶが、試験ではそれぞれの疾病や障害の特徴、問題、対応策を問われるので、試験準備の負担は大変大きい。

保育士は子どもの安全な環境を整える

子どもは未熟であり、保育士は子どもの生命保持のため、清潔で安全な環境を整え、子どもの特徴をよく理解したうえで次のような配慮をすることが大事である。

例えば、子どもは免疫力など体力が未熟なため、適度な運動と休息と水分補給が必要である。私の担当クラスでは、午前中に公園への散歩や子ども用プールでの水遊び、保育所内などでの全身運動など行う。水分補給は積極的に行い、休息であるお昼寝も二時間とる。

また子どもは頭が重く、身体の各機能が未熟なため、身体のバランスが取りにくく転倒しやすい。三、四歳児でも保育室を遊びで走っているうちに、床を滑って転倒することや、他の子どもとぶつかることもあるので、注意が必要である。

さらに、子どもは好奇心が旺盛で活発な反面、予測ができず事故に遭いやすい。公園で遊んでいる時に、一人の三歳児が公園の鉄格子の柵に頭を入れて、抜けなくなったことがあった。子どもは予測できない行動をとるので、保育士は常に目配り、気配りが大事である。

保育士は子どもの情緒の安定を図る

保育所に通う子どもたちは一日の大半を保育所で過ごし、保護者とは長時間離れているため、精神的にも不安定になりやすい。朝七時一五分に保護者が預けた子どもが二〇時まで保育所にいるケースがあり、子どもの心を考えると切なくなる。従って、子どもが安心して保育所で過ごし、自分の気持ちを率直に表現できるように努める。同時に保育士は保護者とのコミュニケーションが大事である。子ども・保護者・保育士の良好な関係づくりが大切である。

一人ひとりに合わせた健康づくりと毎日の生活のリズムに合わせる

保育所から公園までの散歩や保育所内での水遊び、保育室での運動、薄着など、集団で行う健康づくりでは、一人ひとりの子どもの体調や欲求に配慮することが大事である。健康づくりは毎日継続して行うことが大事で、子どもの日常生活に沿った方法や内容で行い、生活リズムに合わせることが必要である。私が勤務する保育所では、昼食やおやつの後は必ず歯磨きを行うことで生活のリズムに組み込んでいる。

遊びを通して健康づくりと家でも実践できるように

子どもが自ら健康づくりに取り組む気持ちにさせることが必要であり、いつまでも保育士が促さないと実施されないようでは、健康づくりを習慣化させられない。日常の遊びを通して健康づくりを身に着けられるように工夫する。

保育所での健康づくりには、散歩や水遊び、運動、手洗い、歯磨き、うがい、薄着などがあるが、家庭での生活でも実践されないと定着しないので、保護者の理解と協力が必要である。

ある子どもは前歯がほとんど虫歯になっていた。保育所だけでいくら歯磨きを励行しても、家庭で実施されないと意味がない。保護者と話し合いし、理解してもらった。その保護者は、子どもを歯医者に連れて行き、家庭での歯磨きを励行するようになった。

子どもの健康異常を見つける

子どもは体力がないので、その体調は本当に変わりやすい。朝の保護者から子どもを預かる時だけでなく、保育士は子どもが遊んでいる時や食事中など子どもの様子に常に目配りが必要だ。

さっきまで元気に遊んでいた三歳児が、椅子に座って他の子どもたちの遊びをぼんやり眺めていた。私は、子どもは遊び疲れて休んでいるのだな、と考えたが、先輩の保育士は座っている子どもに近づくと、表情や顔色を見て、子どもの額に手を添えて、「熱い!」と声をあげた。直ぐに体温計で図ると、三八度あった。

子どもは直ちに、看護師のところに連れて行かれた。幸い、その後、水分をとり、涼しい部屋のベッドに横になって休むことで、子どもの熱は下がり、何ごともなかった。先輩保育士の子どもに対するするどい観察力はさすがだった。このように先輩保育士から私も多くを学んだ。

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。