2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

7 保育の心理学

三歳以上児への保育上の配慮事項

三歳以上の子どもに対してはいろいろな遊びの中で、全身を動かして意欲的に活動することにより、保育士は子どもたちが身体の諸機能の発達が促進されるように配慮する。また保育士は子どもが戸外での遊びや運動にも興味や関心が向くよう留意する。

また、友達とのけんかなど葛藤を経験した場合に、保育士は相手の気持ちや理由を理解させ、お互いが大事な存在であることを思いやる気持ちを醸成する。保育士として体験したことだが、けんかの場合、双方の話をよく聞いて、お互いが理解できるように保育士が働きかける必要がある。

この際に、子どもが自分の気持ちや思いを自分の言葉で相手に伝えることの大事さに保育士は配慮し、子どもの話しに耳を貸し応える。子ども同士でのやりとりを楽しめるようにする。そして、保育所における保育が子どもの小学校以降の学校生活や学習の基礎になることを保育士は意識し、幼児期にふさわしい生活を送るように配慮する。

子どもの発達を決める要因

人間は成長するにつれて、一人ひとり異なる性格や能力を獲得していく。その発達には遺伝的要因と環境的要因があると考えられてきたが、発達についていくつかの研究がある。これらの諸説について必ずと言っていいほど、筆記試験に出題されるので理解しておく必要がある。

まず「遺伝説」とは、発達は遺伝で生まれつき決められているという考えで、訓練や学習という環境による影響はあくまで一時的であり、最終的には「発達は内的な成熟によって決まる」との説である。

次に「環境説」とは、発達は遺伝よりも誕生後の経験や学習という環境的な要因によって決められるという考えである。環境的要因の方が重要であり、環境的要因を操作できれば、発達を完全に制御できるとの説である。具体例がアヴェロンの野生児である。

アヴェロンの野生児とは一七九七年頃に南仏で発見され、捕獲された少年。発見当時は完全に人間らしさを失っており、軍医、イタールによって正常な人間に戻すための教育が五年間行われたが、いくつかの改善はみられたが、完全には回復せず、四〇歳で亡くなった。

また「輻輳説(ふくそう説)」とは、発達は、遺伝的要因と環境的要因の両方合わさって決まるとの考えである。例えば、学業成績は、生まれつきの知的能力の水準と、学習経験とを足した結果であるとする。

最後に「相互作用説」とは、発達は遺伝的要因や環境的要因とともに影響を与えるという考えである。輻輳説では遺伝的要因と環境的要因が足し算で発達に影響するのに対し、相互作用説では遺伝的要因と環境的要因とが掛け算で発達に影響する。現在は、発達について最も一般的な説であるという。

乳幼児期の身体的機能・運動機能の発達について

出産後二八日未満である新生児期には原始反射が見られるが、生後六カ月頃までには原始反射は消えて、大脳皮質の発達により、行動のコントロールができるようになる。月齢や年齢が進むと、身体的機能・運動機能の発達は活発になっていくが、これは一般的な傾向であって、あくまで個人差がある。

筆記試験では、各原始反射の説明や平均的な月齢別の身体的機能・運動機能の発達について聞かれるので、きちんと答えられるようにしておく必要がある。例えば、首がすわる月齢、寝返りができる月齢、つかまり立ちができる月齢、一人で立ち上がる月齢、積み木を二~三個積める年齢、走ったり、両足飛びができる年齢、片足ずつ交互に階段を上がれる年齢などである。

[図表]原始反射とその特徴

乳幼児期の言語の発達について

乳児は母親や養育にかかわる人々の話す言葉を聞くことで、言葉の学習を行う。また一歳半~二歳頃の幼児では語彙数が一気に増加し(語彙爆発)、二歳で語彙数は約二〇〇語となる。さらに四~五歳頃:大人との日常会話ができるレベルに発達する。

筆記試験では、月齢や年齢別に言語の発達について聞いてくるので、ポイントを押さえておく必要がある。例えば、クーイングの時期、喃語(なんご)の時期、最初に話す言葉(初語)の時期、一語文の時期、二語文の時期、多語文の時期などである。

基本的生活習慣の発達援助

基本的生活習慣とは、食事や睡眠、排泄、着脱衣、清潔などの子どもが健康で安全に生活を送り、そして社会に適応的に生活することができるための日常的な習慣である。保育士が基本的生活習慣の獲得を支援することは、子どもが身の回りのことを自分でできるようにすることの支援であり、子どもが主体性や自立性を身につけていくことを支援する。

保育所保育指針では年令別の望ましい基本的生活習慣の発達基準を示す。ただし、個人差はあるので、あくまで目安である。やはり筆記試験では、年齢別の望ましい基本的生活習慣の発達基準について聞いてくるので、ポイントを押さえておく必要がある。

例えば、スプーンやフォーク、コップを使い、食べたり飲んだりできる年齢、ほぼ一人で食べることができる年齢、自分から、または促されトイレに行き排泄する年齢、排便をほぼ一人でできる年齢、ほぼ一人で衣服の着脱ができる年齢、ボタンを外せる年齢、指示に従って昼寝する年齢などである。

「保育の心理学」を学んで

乳幼児の発達には、四つの特徴があり、急速な発達であること、環境からの強い影響を受けること、人間形成の基礎の時期であること、個人差が大きいことである。乳幼児にとって環境は大変重要であり、人的環境、物的環境、自然・社会環境などがある。特に人的環境は保育士の役割りが大きい。

保育士としての子どもへの配慮事項は、保育所保育指針に記載されている。例えば、子どもたちは心身の発達に個人差があることを認識し、一人ひとりの気持ちに寄り添う。子どもの健康は育ちとともに、自主性・社会性・豊かな感性に影響される。子どもが自主的に周りに働きかけ、思考錯誤する様子を見守り、支援する。

乳幼児期の身体的機能・運動機能の発達段階や言語の発達段階について月齢や年齢をきちんと理解しておくことが重要である。保育士は、子どもが基本的生活習慣(食事・睡眠・排泄・着脱衣・清潔など)を自分で自主的に主体的にできるように支援することが大事である。

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。