「わたし考えたんやけど、表の顔はお姉ちゃんで、わたしは裏作業。わたしは人前に出るのはちょー苦手やから。それが、この神崎家を安泰に保つ一番ええ方法やと思う」

はぁ~、そうなんや。溜息しか出ない。映美の提案を全く受け入れられなかったが、取り敢えず頷いた。

私にとっては華道も茶道も行儀作法も、将来へと続いているのではなく頭の上を上滑りしていく日常のルーティン作業に過ぎない。こんないい加減な気持ちでは、裏家業でこの家を守ろうとしている映美に迷惑だ。 

自分の部屋に帰って、つくづくと鏡を見た。美人系なのか可愛い系なのか分からないが、誰もが整った顔立ちだと言う。でも個性がないと自分では思っている。

これが私だという特長が見当たらない。父親はダンディを気取り、母親は優雅なレディを装っている。それが本物かどうか私には見極められないが、どちらもどこへ出しても恥ずかしくない容姿を持っている。

いいとこ取り、皆が私にそう言う。確かに妹は誰に似たのかと噂されるくらいどっちにも似ていないが、妹自身が思ってるよりもずっと可愛いと私は思っている。

その妹と私で神崎家を背負っていく。そんなの、たかが十五歳と十七歳の考えだ。

「未来なんて、明日ですら誰にも予測でけへんのやで」 

祖母がよく言っていた。

一家を牛耳って、両親でさえ意見を言わせて貰えないくらいの力を持っていた祖母が、階段から落ちて急死した。祖母は自分の言葉通りに、あっけなく一生を終えた。

せっかくコンサートで最高の気分だったのに、すっかり醒めてしまった。それでも布団を被るとあの熱狂が耳の中で反響し、その余韻の中で目を閉じた。