高校三年生になって、母親は何が何でも大学に行くよう言い張った。

私の通う学校は、無試験で入れる大学を併設していなかったので、九十パーセント以上の確率で無理だと思いながらも受験せざるを得なかった。予想は的中し、それからの生活は一変した。

同じように親から無能扱いされた塾友達に誘われて、夜の町に出かけるようになった。親には、もう一回受験に挑戦したいから昼間は家で勉強して夜間の塾に通いたい、と言い張って。

「夜に通ってる人らはみんな必死なんやって。昼間は遊び半分みたいなとこあるから、夜学の方がしっかり頑張れると思うねん」

母親は怪訝に満ちた目を向けてきたが、再三の懇願で渋々承知した。親に噓をつくのは快感だった。初めて得た、わくわくと胸が躍るような快感。ぎらぎらとネオンが跳ねる町は、そこが私の居場所であるかのようにウエルカムで迎えてくれる。

私はシュリと呼ばれ、同じように彷徨う仲間たちは、皆が楽天的で友好的で自堕落だ。そして彼女たちはお節介過ぎるときもあれば、至って自分勝手でもあった。狭く隔離されたところで育った私は、見知らぬ世界を覗いた。

「シュリ。今日のワンピ、ええやん。ウチのと取っ替えて」

ええよ。なんて笑いながら、肌が殆ど露出しているキャミソールを着る。自分が堕ちていくのか浮き上がっていくのか、分からない。

「一枚でええから。お願い」

目の前に人差し指を差し出されても、指一本の値が分からず一万円を渡すと、やっぱシュリはお嬢様なんや、と笑いを含んだ顔で頭を小突かれた。