2章 責任構造物としての防災施設の使命

土堤への妄信が河川の役割を妨げている?!

「土堤原則」が大災害の要因となる天井川を拡大させてきた

「水は高きより低きに流れる」「海は水を辞せず」「水は低きに流れて海に至る」「水を制する者は国を制する」と昔から言われ、水の性質や役割、威力は周知のところである。海は流れ入るものを拒まない。流木でも家屋の残骸でも車でも家電でも黴(ばい)菌でも放射能でも、何でも受け入れる。

どのような大雨でも、記録的な豪雨でも海はそれを受け入れている。海が受け入れを拒んだが故に洪水を引き起こした、ということは未だない。河川には、集積した雨水を海に流して災害を防ぐという重要な役割がある。この役割を果たすためには、河床の高低差と集積面積に対する収容容積が適切でなければならない。

降雨面から集まった集積水が海に流入するメカニズムが物理的にバランス良く整っていないと河川の役割は果たせない。特に高低差に関しては、流れ始める「起点」から終点基準である「海抜」に向けて線を引きそれを河底にすることを基準として高地があれば掘り下げて流路を造り、人の住む生活基盤よりも河床の方が高くなってしまう「天井川」を造らないことが重要である。

[図表1]天井川

堤防の構築に当たって古人は、近くの土を人力で掘り、それを人力で盛り上げて成型して完成に至った。そのため、堤防は三角錐の形をしている。

またその昔、堤体を造る材料として手軽に入手できるものは「土砂」しかなかったので、土砂を盛り上げていくと必然的に今の堤防の原型となったのであるが、紀元前の時代の構造体である。この土を盛り上げて造られた「土堤」を行政は河川堤防の標準形状としてきた。

堤防と言えば土堤でなければならず、これを「土堤原則」として政令で定め、その機能を「安全の守り神」と妄信してきた。言わば「土堤ラバー」である。

特に河川や海岸堤の責任を負う行政のトップクラスの者が「堤防の構造とは土堤」であると断言し、その補強工事の際に土堤に物を入れることすら頑なに拒んできた。そして次々と土堤を高くし、天井川の規模を拡大してきた。天井川の拡大は大きな事故になる要因を増幅させているのである。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『国土崩壊 「土堤原則」の大罪』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。