2章 責任構造物としての防災施設の使命

既存の防潮堤は地震や津波に耐えうる構造ではない

原理的に責任構造物としての使命を果たせない

津波は、押し波、引き波を繰り返す、その時の越水で、壁体の表側と裏側が洗掘され脆弱さを加速させる。またモナカ構造の長大構造物は、歪みが集まったところに応力(物体に外力が加わる際、その物体内部に生ずる抵抗力のこと)が集中して破壊されることが最初から決まっている。

既存の防潮堤の主材料はコンクリートと土砂である。これを地震が襲い、続いて津波がたたみかける。これを動物に例え、堤防を牛に見立てると、牛をいくら肥育して太らせ筋トレで鍛えても、襲ってくる津波はライオンである。「コンクリート+土砂」vs「地震+津波」の勝負は、素材の持つ機能で最初から負けているのである。

[図表]牛をいくら肥育し太らせても、襲ってくるライオンには敵わない

東日本大震災で、要塞と言われていた岩手県宮古市田老地区の防潮堤も、地震の瞬間に応力の集中箇所が破壊され、その傷口に津波が容赦なく襲い、大惨事を引き起こした。

既存の防潮堤は、①堤体を構成する素材が地震力と波力には勝てず、②フーチング構造で地震・津波に対して耐え切れる(ふんばれる)構造ではなく、③モナカ構造でどこかに応力が集中すると崩壊する。既存防潮堤の素材や構造は、高波や津波に対抗し受け止めることが最初からできない構造であり、原理的に責任構造物としての使命は果たせないのである。

防潮堤は、地震に耐え抜いて、次に襲ってくる津波に対抗するためにある責任構造物である。その構造物が、最初に襲ってくる地震で崩壊するなど言語道断である。防災構造物には、ハッキリとした役割があり使命がある、責任を持ってもらわないといけない責任構造物であり重要施設物である。

既存の防潮堤は、地震によって弱体化し、その後に襲ってくる津波の第一波の押し波で根こそぎ流されてしまう、引き波に対抗しようにも、既に跡形もなく流されている。たとえ堤防を越える高波が来ても堤体が残って粘っていれば、波流のエネルギーを大きく減退させることができる。

東日本大震災時も、津波の第一波で堤防が根こそぎ流されたが故に、海からの大きなエネルギーが山まで到達し大災害となった。いくら大きな波頭が来ても堤体が粘って残存していれば、被害は大幅に減少していたことは確実である。防潮堤はまず地震に耐え、次に襲ってくる津波に耐えうる構造体でなくてはならない。

国民は巨費を投じて、自分の安全安心を行政に全て託しているのである。脆弱な構造体に大金を注ぎ込んで構築し、責任構造物として国民の安全を守ろうとした行政の責任は大きい。

[写真]東日本大震災でバラバラに崩壊した防潮堤
※本記事は、2020年5月刊行の書籍『国土崩壊 「土堤原則」の大罪』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。