家に帰った私は、ふと、左胸がチクチクと痛むのを感じました。(心臓? いや、そんなに深くない……乳ガン?)そう思ったのは、Mさんに「ガンよ!」と言われ続けていたからに、ちがいありませんでした。

私は、乳ガン検診を受けました。数回、検査に通った結果、乳ガンを告知されました。でも、早期だから、今手術を受ければ助かると言われました。頭の中が真っ白になりましたが、早い方がいいと思い、手術の予約をしました。術前の検査を受けたあと、説明を受けました。

「手術は標準的なもので、乳房温存手術です。悪いところだけを取って、そこに詰め物をします。しかし、時として、手術中に、検査ではわからなかったガンの広がりが見つかる事もあります。その時は、お乳を全部取ります。万一ですが、そういう事も了解しておいて下さい」

私は、万一と言われましたが、麻酔から目が覚めたら、お乳が無い事もあるなんて! 絶対に嫌だ!と思いました。心が事態についていけず、手術をキャンセルしました。

そして、セカンドオピニオンだけで納得できず、サードオピニオンを受けに行きました。その先生は、乳房温存手術の権威として知られていました。検査を受けたあと、言われました。

「あなたに、乳房温存手術は勧めません。なぜなら、術後、必ず変形するからです。乳房温存手術のあとは、放射線治療をします。胸の大きい人はいいですが、あなたのように胸の小さい人は、それで焼けて、変形するんです。断言します。ですから、あなたには、乳腺の全摘出手術を勧めます。そのあとは、私が腕のいい形成外科医を紹介しますから、胸にシリコンのインプラントを入れてもらえば、見た目は元通りになります」

術後の放射線治療の説明を受けていなかった私は、初めて知る真実に驚きました。

でも、二度切るのは嫌だと思いました。帰り、その事ばかりを考えていて、私は、素人の発想ですが、乳腺を出して、すぐにシリコンを入れてもらえたらいいのに……と思いました。そして、帰って、ネットで調べてみたら、まさに、乳腺を全摘出して、すぐに形成外科医に、シリコンのインプラントを入れてもらう乳房同時再建手術という方法がある事を知りました。

私の願いは叶い、乳腺外科の先生が乳腺を全摘出し、続いて、形成外科の先生が、シリコンを入れる、乳房同時再建手術を受ける事ができました。当時、この手術は珍しく、この病院でも初めての手術でした。おかげで、乳房の見た目は全く変わらず、放射線治療を受ける必要もなく、もう乳腺が無いので、以降、乳ガンの心配をせずに済むようになりました。

近年、保険適用で受けられるようになった手術ですから、乳ガンにかかった女性には、是非、一つの方法として、知っておいて頂きたいと思います。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『しあわせ白書』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。