「道」は広がって行く

私の場合、華道という「道」を歩んでいますが、「道」というのは、進んで行くほどに、広がって行くものなのだと、知りました。季節ごとに、生ける花があり、それには、五節句や、二十四節気など、古くからの暦の知識が必要ですし、花の「型」を学ぶ上で、陰陽思想や五行思想を勉強しなければなりません。

花にまつわる短歌や詩歌を学ぶ事も、華道を深めるのに役立ちます。また、花を生ける花器について、どのような種類があるのか、焼き物についての知識も必要になります。華展会場では、しばしば茶席が設けられるため、茶道も知る必要があります。着物も自分で着付けられるようでなければ不便です。進めば進むほど、色んな知識を学ぶ事になります。

もちろん、花を生ける技と心を体得するのは、一生かかっても極められないほど奥の深いものです。華道を始めて、人生とは、常に学ぶ事なのだと痛感しています。また、そうであるからこそ、謙虚になれ、人との和合の大切さを知り、人間として成長していけるのだと思います。

これは、どの「道」であっても同じ事が言えるのではないかと思います。人は、歳を重ねていきますが、その中にあって、成長していってこそ、自分の中に発見があり喜びが生まれ、常にイキイキと生きていると実感されるものなのだと思います。

とかく、変化のない日常に流されがちで、何のために生きているのかと、悩んだり苦しんだりするのが、人生ですが、何か一つ、「道」を進む事で、自分を活性化でき、それまで気付かなかった才能を発見し、自分には、まだまだ可能性があるのだと、生きる喜びを知る事ができます。

日本の長い歴史の中で育まれた「道」には、日本人の深淵な叡智がふんだんに隠されており、それを一つ一つ紐解いていくのは、自分のルーツを知る作業でもあり、深い生きがいを感じる事ができます。

人生とは、考えてみれば、自分が何者なのかを探す旅のような気がします。その旅で、地図も持たず、「道」に迷うのではなく、一本の「道」を信じ、懸命に進む事で、迷いが消え、「道」の周りの様々な景色を楽しむ事ができるなら、こんなに素晴らしい事はありません。

先人が敷いてくれた日本の「道」には、そんな人生を豊かにしてくれる懐の深さがあります。機会があれば、皆さんにも、日本人に生まれた「ご縁」を信じて、何か「道」を進んでみて頂きたい、そう思わずにはいられません。