人とのつながり。師や同志と共に

好きな「道」へ進む事によって、人は、様々な本当に素晴らしい体験をします。その中でも、特に素晴らしいのが、人とのつながりを強く感じられるようになる事です。

例えば、私の場合は華道ですが、そうすると、やはり、花の好きな人に出逢います。出発点からして、既に共通の思いを持っているわけです。これは大変、重要なメリットです。人は、教育期間は学校において、何となく気の合う人を見つけ、友達になります。

しかし、社会へ出ると、人間関係は選べず、全く気の合わない人と出会っても、毎日を一緒に過ごさなければなりません。上司、同僚、部下、どの立場であっても、それは心にストレスが溜まり、酷い時は、私が体験したように、うつ病の発症へと発展する事もあります。

あとから思えば、人生の修行であり、人として、自分を成長させてくれた経験であったと、わかるのですが、やはり、人間関係の軋轢は、非常に苦しく、できれば避けたいものです。

ですが、職場とは、そもそもが追い越し追い越せの競争の場であり、いくら人間ができている人であっても、最低限のチームワークを保ってはいても、心に負荷を感じている、それが正直な本音ではないでしょうか。

そんな時、仕事とはちがう、好きな「道」を持つ事で、共通の思いを持つ人達と出逢う事は、大変に意義のある事です。まず、師との出逢いは、その技を学ぶ事だけにとどまらず、一つの「道」を極めた人にしかない、独特の大きな愛が感じられ、惹きつけられます。

それは、恐らく、自分が粉骨砕身して修得した伝統を、次の世代へと教え伝えていきたいという使命感に満ちた思いからくる愛情だと思われます。この師との出逢いにより、それまでの人生では得られなかった師弟愛という愛に包まれます。

教えられる過程においては、厳しくあっても、師のその根底には、必ず愛があるものです。そして、師と礼節のある関係を持ち、学びながら「道」を進む事は、強い絆で結ばれ、本当の意味での、人生の成長につながります。「道」にはずれない生き方が身についていくのです。

また、門下生同志とのつながりは、互いに刺激であり、励まし合う関係で、大いに頼もしいものです。そこで、自分を律する事を知り、思いやり合い、認め合う関係は、他ではなかなか得られない強い絆を感じられます。

「道」を同じくする者同志の集まり、つながりこそ、喜びも悲しみも共にし、分かち合う、大きな家族のような愛情で結ばれています。師や同志と、血はつながっていなくとも、人と深いつながりを感じられる、そういう関係を持てる事は、人生で誰もが感じる孤独を救ってくれる、まさに心の滋養だと思われます。