認知症の認知機能障害(中核症状)と行動・心理症状(周辺症状) 

認知症の人には、認知機能障害と行動・心理症状が現れます。認知機能障害は中核症状、行動・心理症状は周辺症状とも呼ばれます。

脳の神経細胞が壊れると、もの忘れなどの認知機能障害が出ます。もの忘れが程度を超えると暮らしにくくなり、行動や心の動きも異常になります。本人の性格、環境、人間関係も影響して、精神症状、性格変化、幻覚・妄想、夜間せん妄、徘徊、食行動異常、排泄行動異常などが現れます(図2)。

(図2)認知症の認知機能障害と行動・心理症状
認知症の症状とは、認知機能障害と行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)を合わせたものをいう。

認知機能障害とは?

認知機能障害は、すべての認知症の人に見られます。認知機能障害とは前章にも述べたもの忘れ、失語、失行、失認、遂行機能の障害などです。認知症の人は時や所の捉え方が違うので、時や所などの見当識(自分の置かれた状況) が分からなくなります。見当識障害は記憶障害と並んで早くから現れます。

記憶はコトが起こってからの時間により3分類されます。覚えてから1分までの「即時記憶」、数分~1週間前までの「近時記憶」、昔の「遠隔記憶」です。アルツハイマー病では、まず「近時記憶」を失います。記憶障害以外の他の認知機能も障害されます。

例えば、

・今日は何日? 今、何時?(見当識障害) 

・ここはどこ? あの人だれ?(見当識障害) 

・夏なのにまだ冬服着てる(見当識・判断力障害) 

・善し悪しが分からない(理解・判断力障害) 

・2つ以上のことが重なると間違う(理解・判断力低下) 

・計画や段取りができない(遂行機能障害) 

・同じ食材が冷蔵庫にたまる(遂行機能障害) 

・必要なものが買えない(遂行機能障害) 

・昔とすっかり変わった(認知機能障害+行動・心理症状) 

・周りと上手く合わない(遂行機能障害) 

などがあります。アルツハイマー病では、これらの症状はよくみられます。

その他、

・モノの名前が出ない「換語障害」

・モノを言い違える「錯語」

・思い通りに図が書けない(10時10分の時計が描けない) 

・服を裏表逆に着る「着衣失行」

・自動販売機、自動改札、銀行ATMなどが使えない「失行」

・見えている交通信号を判断できない「失認」

・使い慣れた全自動洗濯機が使えない「失行」

・近所で道に迷う「地誌失認」→徘徊

もあります。これらの認知機能障害は、認知症のない人でも時にありますが、アルツハイマー病の人では、顕著にみられます。失語は他の認知症でも起こりますが、前頭側頭型認知症で顕著に見られます。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『認知症の人が見る景色 正しい理解と寄り添う介護のために』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。