第二章 がん細胞との会話

患者を生かす言葉、殺す言葉

私がステージⅣでもあんまり元気なことを言うので、「このオバハンを少し静かにさせよう」とでも思ったのでしょうか? 主治医はカルテに記入しながら、「今のうちにいろんな人に会っておいた方がいいですよ」と顔も見ずにポツリと言いました。

その言動に私は憤りを感じましたが、一旦は自分の胸の内に収めました。けれども帰り際に「先生」と声をかけたのです。医師はそのとき初めて私の顔を見ました。

「この病院のがん患者さんは、先生のひと言で半分以上死んでますね!」

私は彼の目をしっかり見て言いました。

四十歳そこそこのその医師は一切反論しませんでしたが、「このオバハン、スゴイこと言うな」と思ったはずです。でも私はこのような医師の心ない発言が許せなかった。このとき医師と患者の立場において、考えさせられる出来事がたくさん起きる予感がしていました。

その医師は淡々と画像から読みとれることを話していました。患者の気持ちを慮(おもんばか)ることもなく、ただ平然とその事象のみを伝えていたのです。それは人を診ているというより、病気を診ている感じでした。

病棟に来る医師たちも、この病院の名声に酔いしれているだけで、心をどこかに置き忘れてきたような人が多いと感じました。中にはそうではなく、ハートがある人もいましたが……。

医師はどんな場面においても、患者が生きる力を奪うような言葉を放つべきではないと思っています。むしろ病気に負けないという気持ちを奮い立たせるような声かけをすることが務めなのではないでしょうか。

ただ私は一度たりとも、医師の言葉によって「もうダメかもしれない」とめげたことはありませんでしたし、ちっとも死ぬ気にはなりませんでした。

医師の心ない

発言にも堪えない。

生きることだけを

考えた。

※本記事は、2019年8月刊行の書籍『がんでは死なない 余命3カ月から生還する心構え』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。