途中、河の砂州の中で焚き火を燃やしている小さなレストランに寄る。キリキリに冷えたサンミゲル・ビールが喉に心地よく、汗が出尽くした体の乾きを静めてくれる。

焚き火の傍では、串にさされた焼き鳥がジュウジュウと美味しそうな音を立てている。早速買い求め、漕ぎ手とシェアする。漕ぎ手の青年達にはにかんだ笑顔が浮かぶ。

その時おにぎりが残っていたのを思い出し、ナップザックから取り出し、漕ぎ手にも渡す。若干躊躇したような顔をしたが、一口頰張ほおばると笑顔が溢れ出た。

悠々と流れる河。漕ぎ手の労働後の満足そうな笑顔、冷えたビール、ジューシーな焼き鳥、そしておにぎり。これ以上のパーフェクトは求めては罰があたっただろう。そんな気がした。

神は細部に宿りたもう? あの日、私達の側には確かに神様がいてくれた様な気がする。

一緒に旅した同期生は、その後、考えるところがあり、役所を辞職し、フィリピン研究の為にフィリピン大学の大学院に進んだ。その後幾つかの季節が過ぎ、東京でその同期と再会した時は、東南アジアの思い出を肴に、神楽坂の居酒屋で痛飲した。