邦人旅行者達が、私達のおにぎりを目聡めざとく見つけ感嘆の声を上げた。「アッ、おにぎり。何でぇー。食べたぁーい」と騒ぎたてた。「ルック・アット・ザマ」。

日本では、多分ただのおにぎり。しかし、マニラの郊外では、千金の値。その時の私達の優越感及び満足感といったら。なかなか得がたい感覚だった。

私と同期がボートの真ん中に、その前後に漕ぎ手が座り、河を上っていく。途中急流では漕ぎ手が水の中に入り、ボートを押し上げる。大変な重労働だ。黙って座っている私達にかすかな罪悪感がよぎる。

遠くに流れ落ちる滝やどこまでも広がるヤシ畑を見ながら約一時間で終点の大きな滝の滝壺に着いた。滝壺ではいかだに乗ったり、小休止した後、帰路は流れにボートを任せながら河を下る。