次に主演第三作の「踊る不夜城」(‘37)を見てみよう。これも同じようなバックステージ物である。

プロデューサーのロバート・テイラーは企画するショーへの出資契約をアイスクリーム会社の社長と結ぶが、決定権はその妻の方にあった。テイラーはニューヨークへ向かう列車の中でエレノア・パウエルと知り合う。彼女のタップの実力を知ったテイラーは、ショーの主演に据えることに決める。

しかし、二人が恋仲になったことに嫉妬した社長の妻は契約を破棄し、ショーの制作が立ちゆかなくなる。パウエルは自分の馬を障害レースに出場させ、二万五千ドルの賞金を得てショーの資金にする。舞台は無事完成し、皆が出演しフィナーレとなる。

冒頭メトロポリタン劇場の前景から急に場面が床屋に変わり、理髪師のチャールズ・イゴール・ゴリンがオペラ「カルメン」の“闘牛士の歌”を歌っている。ストーリーとは何の関連もなく、彼の歌を聴かせるためだけの目的でしかない。次に、列車の中に隠れていたパウエルをジョージ・マーフィーとバディ・イプセンが見つけ、三人で歌い踊る“ステップをまねて”。三人が仲良くなりテイラーが彼女の実力を知るという点で、物語の進展を助ける意味は十分にある。ただし細長い列車の中を側面から撮影し、三人が画面を左右に踊るショットが多く、いかにも平面的である。時に車内を進行方向から撮影し、画面奥から手前に動いて奥行きを表現する構図もあるが、もう一工夫足りない。

パウエルは列車内のテイラーのコンパートメントにやって来て、出来上がったばかりの曲 “君と僕のもの” を歌う。二人の親密さを高めている点でストーリーの展開に貢献している。ちなみにエレノア・パウエルの歌はマジョリー・レインによる吹き替えである。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『踊る大ハリウッド』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。