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証言者同士の話が食い違い真実が判らぬままという、いわゆる「羅生門スタイル」の物語である。証言それぞれのバランスがとれず矛盾もあると批判され、残念ながら今日あまり評価の高い映画ではない。しかし、皮肉の効いたストーリー、華やかで洒落たミュージカルシーン、美しい女優たちなど、小粒ではあるがよくできた作品ではないかと思う。

映画冒頭のタイトルナンバー“レ・ガールズ”は、東洋風の動きを織り込みながらソフィスティケートされたコールならではの振付けだが、踊るジーンにはどこか生彩がなかった。体のさばきに洒脱さが足りず、回転する時の体の軸もかなりぶれていた。

振付けのコールはジーンにこれまでの彼とは違うシックで洗練されたダンスを期待したが、うまくいかなかったと次のように語っている。

「……結局のところ、企画の段階では“魅惑の巴里”はすごくおしゃれな作品になるはずだった。でもそれほど良くならないだろうって判っていたよ。この映画でジーンのアシスタントをしていたジニー・コインも、そういうことは忘れるようにと言ってくれた。

ジーンのキャリアも終盤に差し掛かったこの時期に、自分のスタイルは変えられないってね。ジーンについて言えば、彼は実際のダンス自体よりナンバーの振付けや演出に遥かに興味を持っていた。それが僕らが違うところであり、互いに上手くいかなかった原因だと思うんだ(63)」