二 日本文化と世界

10.春の訪れ

少し暖かい日差しの季節となった。黄色や緑色の、可愛らしい花や葉が芽を吹く。菜の花の鮮やかな色。梅の蕾が膨らむ様子は、明るい気持ちにさせてくれる。

蕗のとうや筍。そして山菜などの美味しい味覚の到来だ。中でも地面から顔を出す「蕗のとう」のほろ苦さ。素朴な味。私の好みだ。山菜をカラリと揚げた味は日本の四季を告げてくれる味わい……。

日本を代表する揚げ物の一つに「てんぷら」。実はポルトガル語に由来している。

かつて初めて日本を訪れたポルトガル人は、様々な文化を日本に伝播する。金平糖。カステラ。そして鉄砲など……。当時の日本人にとって新鮮な驚きであった。大げさにいえば、日本の歴史が少なからず動いたのだ。

また逆に、日本から海外へ伝えられたものもある。日本人の魂と心。美術品としての日本の刀剣。

後にパリ万国博覧会での浮世絵。それらは海外の多くの芸術家に影響を与えた。十九世紀後半のフランスの「印象派」。イギリスにおけるラファエル前派の「画家・詩人」たちの「ジャポニズム」だ。

現代でも日本の良いものが世界へ発信されるのは、とても誇らしい気持ちになる。

遠い異国の地に華やかな美しさを伝える日本の桜。アメリカ合衆国のポトマック河畔の桜並木。友好親善のために東京から贈られたもので、今なお多くの人々に「日本の華やかな美」を楽しませている。

年毎の花見はどんちゃん騒ぎの様と、開放感。とても微笑ましくもある。

能『西行桜』。西行法師の庵にある桜を、一目見ようと、多勢が訪れる。渋々と招き入れるが「自分は心静かに、花を楽しみたいのに……」。だが、人々はそのような、思いを知るべくもない。

西行は「こんなことになったのも、この桜が、一時の美しい花を咲かせ、やがては散る」。その様を、自分の心の内に、留めたかったものを……。「これも桜の美しさの咎だ」と。

お花見で楽しい気分となり、少々、羽目を外してしまう気持ちはわからないでもない。

世の常として付和雷同して自分自身、何も考えず、時の流れのまま行動するのは人の本能なのだろう。

※本記事は、2018年11月刊行の書籍『世を観よ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。