マイケル・ポーターは医療の質の評価は“経費1ドル当たりの健康上のアウトカム”でなければならないと主張しています[13]。

現在の我が国の医療制度ではDPCが導入されたとはいえ、診療報酬システム上、より過剰な検査を行い、より過剰な投薬を行い、より多くの患者を入院させることがインセンティブに繫がりますので、単位経費当たりのアウトカムに注目されていません。診

療のアウトカムをベースにして、10年生かせば100万円という医療費支払い制度は質に基づく支払い(Pay for Performance:P4P)と呼びます。P4Pは1990年代に米国から始まった考え方で、急速に世界中に拡がりを見せています。

医療における競争の本質そのものを改革する必要があるとマイケル・ポーターは指摘しています。病院別の“経費1ドル当たりの健康上のアウトカム”がランキング形式で発表されれば質の評価が明白です。

このように近い将来ビッグデータ解析によって、真のアウトカムが明らかになる時代が到来するとしても、現在のところは医療の評価基準は不明確です。

臨床の現場では「◯◯先生はとてもいい先生」「◯◯先生は手術が上手」のような話は身近に存在しますが、その判断基準は何でしょうか? 学会での実績や研究成果による判断かもしれませんが、マスコミが作り上げた価値観であったり、その医師の人間性であったり、マイケル・ポーターが言うところの医療の質と同義とは思えません。

このように、現在の医療の基準は極めて主観的なものであり、公正な評価が行われていません。マスコミに登場する有名医師よりも技術が高く、知識が豊富で、人間性に優れた医師は私の周りにもたくさんいます。

私自身は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の専門家ですが、他の内科一般の先生方よりも本当にNAFLD患者の生存率が良好で、よい医療を施しているのか?いくら自信とプライドを持っていてもアウトカムが本当に勝っているのかは自身でも分からないのです。