2006年に実施したIORRA調査で花粉症についてお聞きしました。リウマチ患者さんにおける花粉症の頻度は日本の一般人口とほぼ同じでしたが、リウマチ患者さんでスギ花粉症を合併した場合は、リウマチの疾患活動性指標(強さの程度)が低い、つまり花粉症のある人のほうがリウマチが軽症である傾向が認められたのです。服用中のステロイドの作用を考慮しても、この結果は統計学的に有意差がありました(「Clin Exp Rheumatol.2007:25(3):505-6.」)。Koizumi K.et al.

ちょっと意外な結果でしたが、理論的には十分納得できます。免疫をつかさどるT細胞というリンパ球があり、その中にTh1細胞とTh2細胞という兄弟分のような細胞があります。

関節リウマチはTh1細胞が関係する病気で、花粉症はTh2細胞が関係する病気です。つまりTh1細胞が増えるとリウマチが悪くなりますが、そのぶんTh2細胞が減るので花粉症は良くなります。

逆にTh1細胞が減ってリウマチが良くなると、Th2細胞が増えて花粉症が悪くなるのです。リウマチが良くなっても花粉症で辛い思いをしたくないことは当然ですが、関節リウマチは放置すると関節が変形し、場合によっては寝たきりになる病気ですから治療が必須です。

一方の花粉症は季節が過ぎれば軽快しますし、またマスクなどでスギ花粉を避けることでかなり予防できます。関節リウマチの患者さんは、やはりリウマチをしっかり治療することが優先するのは間違いないことだと思います。

「この世の中は良いことばかりではない」ことの一例でしょうか。桜の季節は、南岸低気圧による「春の嵐」の季節でもあります。「花に嵐」、「好事魔多し」。頭上の桜に目を奪われて、何かにつまずいて転倒した、なんてことがないようにご注意くださいね。