第二章 日本のジャンヌダルク

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【法隆寺(ほうりゅうじ)】

「それは、法隆寺の人が火災の中を命がけで運び出して、大事な仏さまを救出したのだろうって書いてある本を読んだことがあるんですけど……」まゆみが遠慮がちにいった。

「それはたぶん、かなり前の本ですやろ」坂上はにっこり笑った。「以前は、たしかにその考え方が主流でした。そやけど問題の釈迦三尊像をよう調べてみると、火災の跡がまったくないんです。あの傷は建物の梁かなんかが焼け落ちてきてついた傷だろうといわれていましたんやが、そんな大火事の中をあの重い仏像を運び出すことなどできるわけがありません。

そしてもう一つ不思議なことがあります。それは東側に安置してある薬師如来像です。じつはこの仏像がもともとは金堂の本尊だったことがわかってます。するといまの本尊の釈迦三尊像は、あとから入ってきた新参者やちゅうことになりますやろ」

「ええっ、それ、どういうことですか? じゃあ、いまの本尊は、それまでの本尊を押しのけて居座っている、ということになりますよね」まゆみは驚いて確認した。