第二章 日本のジャンヌダルク

「このあと彼らは夢殿(ゆめどの)に代表される東院伽藍のおもだった建物や仏像などを見学し、さらに中宮(ちゅうぐう)寺を見て、ホテルに帰りついたのは夜の八時になろうとするころだった。

「ああ、疲れたぁ!」

ホテルに帰り着き、部屋に入るなり、まゆみはベッドの上に身体を投げ出した。沙也香もバッグをテーブルに置くと、ソファーにドスンと腰を下ろした。身体は綿のようにくたくたになっている。

だが、沙也香はまゆみのようにベッドに寝そべるわけにはいかない。

彼女はバッグを開き、坂上にもらった資料とインターネットからダウンロードした資料を取り出した。それをもう一度読み直し、そのとき感じたことを書き込んでいく。

「沙也香さん、なにやってるんですか」

ベッドに寝転んだまゆみが、頭だけを蛇の鎌首のように持ち上げて聞いた。身体を起こそうにも疲れきって起きられそうにない。沙也香も自分と同じように疲れているはずなのに、なにをやっているのだろう。

「今日見て回ったとき、感じたことを書き留めているのよ」