第二章 日本のジャンヌダルク

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 その夜は、まゆみが予約しておいたホテルに宿泊した。部屋は手頃な広さのセミスイートだ。沙也香は部屋に入ると、前もって送っておいたキャリーバッグを開き、ノートパソコンを取り出してセットした。

部屋にはLAN端末があり、インターネットに接続できるようになっている。彼女はさっそくWEBページを検索し、一心に画面を見はじめた。

「なにを見てるんですか」
沙也香の顔があまりにも真剣なので、まゆみは画面をのぞき込みながら聞いた。

「明日行ってみるところの情報よ」沙也香はつぶやくようにいうと、まゆみの顔をながめて、ふと表情を和らげた。「だってさ、今日、山科教授からわたしがなにも知らないし、なにも下調べもしてこなかったことについてきつくいわれたじゃない。あんなこと、二度といわれたくないのよ」

「だってあれは、山科教授が沙也香さんに口出しされたくないための口実じゃないですか。もし沙也香さんがいろんなことを知っていたとしても、また違うことをいったと思いますよ」

「それはそうだけどさ。でもわたしの考えが甘かったのはたしかね。下調べもなにもしてこなかったのは、わたしが無責任だったから。それを他人(ひと)のせいにはしたくないの」

「でも……」とまゆみがなにかいいかけようとするのを沙也香は止めた。

「だけどさ、そんなことはどうでもいいのよ。ともかくわたしは、いま自分がやるべきことを一生懸命やるだけ。それしか考えていないわ。山科教授にハッパをかけられて、ますます燃えてきているの」

「ふーん……」

いつものことながら沙也香の心の強さには舌を巻く。こんなかわいい顔をして、どこからそんな強さが出てくるんだろうと不思議に思う。自分とは人種が違うのかもしれない。

そんなまゆみの心の動きに気づいているのかどうか、沙也香は再びパソコンの画面に集中しはじめている。まゆみはしばらく沙也香のようすをながめていたが、やめそうな気配がまったくないので、先に風呂を済ませることにした。